東京都議会2024年第3回定例会を終えて(談話)

2024年第3回定例会を終えて(談話)

2024年10月4日

  都議会生活者ネットワーク  岩永 やす代

 

本日第3回定例会が閉会しました。

補正予算の給食費無償化について

今回の補正予算に、給食費無償化のための市町村総合交付金が盛り込まれました。当初予算の給食費負担軽減事業では、多摩地域の自治体で完全無償化できないところが多く、財政力の違いが直接影響する事態になっていました。都が助成し自治体負担を8分の1に軽減することで、すべての自治体が完全無償化するよう誘導するものです。これが公表されるやいなや、自治体も無償化に向けて動き出しました。市町村総合交付金は、本来使途を限定するものではありませんでしたが、政策連携枠として今回は給食費無償化に限定した財源です。

生活者ネットワークは、長く食の安全に取り組んでおり、給食についても、添加物やアレルギー対応、遺伝子組み換え問題、また地場農産物の積極的導入など各地域で質の確保に目を光らせてきました。今後も食材費の高騰が見込まれるなか、無償化が質の低下につながることのないよう、各地域でのチェックが必要です。 

カスハラ条例はこれからの運用に注目

カスタマーハラスメント防止条例が可決成立しました。顧客からの暴言や脅迫などの迷惑行為で、従業員が傷つき深刻な被害を受ける例が後を絶ちません。それを防止するための条例ですが、罰則規定は設けず、都が指針を作成し、情報提供や啓発、相談、助言などを行うとしています。事業者には、指針に基づき体制整備や手引きの作成などの努力義務が課されます。社会全体でカスハラをなくそうという理念や被害の防止は重要ですが、同じ内容の訴えでも、言い方や態度によってカスハラに当たるのかどうか曖昧さは残ります。

また、消費者がクレームを出したり、行政に説明を求めるなどの正当な権利が侵害されたり萎縮することのないよう注意する必要があり、運用に注目です。 

女性活躍基本条例(仮称)について

知事は「我が国の今後の成長の鍵を握る女性活躍」について条例化の議論を進めるとしています。東京都には「男女平等参画基本条例」があり、平等参画社会の実現に向けた姿勢を明確に示しています。女性活躍の条例は産業労働局が担当しており、職業・労働における女性活躍への期待は言うまでもありませんが、経済政策のための女性活躍は本末転倒です。条例のゆくえを注視しています。 

新たな観光資源よりオーバーツーリズム対策を

お台場海水公園に世界最大級の噴水を整備し、東京臨海副都心の新たなランドマークとして国内外にアピールすると表明しました。埋立地の売却益を充てるので税金は使わない、とのことですが、設計費や運営・維持管理費などについての説明はありません。

この間、多くの批判の声があがっている都庁舎へのプロジェクションマッピングや、都民広場への人工芝の設置など、公金を使って環境を犠牲にしてまで公共施設を観光資源とし、世界都市東京を目指す姿勢は、都民全体の財産を企業の金儲けのために委ねることにほかなりません。

むしろ、日本の各地で問題になっているオーバーツーリズムへの対策を東京でも考える必要があると考えます。 

地域の学校をインクルーシブな学びの場に

不登校の子どもが右肩上がりに増えています。不登校や障がいのある子どもに特別な支援をするため、通常の教室とは別の場所で、支援内容を細分化し支援員の配置をすすめてきましたが、追いつきません。通常学級での対応力を上げるために、正規教員を増やし、複数担任制度を導入するなど、トータルな支援力を上げていく必要があります。増え続ける不登校の子どもたちは、今の学校に合わせることができず悲鳴をあげているのです。社会に出ると多様な人たちと出会い、だれも排除されない環境を構築する必要があります。その基盤となる学校が変わらなければ問題は解決しません。インクルーシブな学びの場、子どもたちに選ばれる学校教育へ抜本的な改革が急務です。

 

小池知事の3期目が始まりました。知事は、給食費無償化だけでなく、第一子からの保育料無償化や医療費無償化の所得制限撤廃など、公約の実現と称して矢継ぎ早に発表しました。子育て世帯の負担軽減策は歓迎されるものですが、近隣県からは反発する苦い反応も出ています。

また、強靭化の名のもとに地下調節池の拡大や、都内各所で行われている再開発事業など、大規模土木工事も目白押しです。再開発は不動産バブルをあおり、住宅が高騰、一般都民の住宅購入を阻み、家賃の高騰も招いています。超高層のタワーマンションや巨大オフィスビルなど、東京は拡大を続けています。

今後確実に訪れる人口減少への対応が必要であり、巨大都市東京でダウンサイジングを図る方法を模索しなければなりません。決定的に足りない情報公開と市民との対話を軸に、事業の進め方を抜本的に変えることが必要です。

ウクライナの戦争もイスラエルの攻撃も終わりが見えず、戦禍は拡大し、世界情勢の不安定化は増すばかりです。日本では首相が交代しましたが、政治とカネの問題も旧統一教会の問題も置き去りにしたまま総選挙へとなだれ込む様相です。 

物価高や人材不足など先行きの見えない暮らしの課題が山積しています。今必要なのは生活都市東京への転換です。

困難な時代にあっても、多様な人々が安心して生活できるまちにするため、都議会生活者ネットワークは、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。

みなさまからのご提案をお待ちしております。

国立市の新学校給食センターオープン時の試食会に参加(2023年8月)。地場野菜納入率目標は30%。夏場の酷暑が収穫にも影響している

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