子どもが生きていこうと思える社会をつくる 子どもの自治力を育むチャイルドライン
東京・生活者ネットワーク広報委員長/元都議会議員
杉並・生活者ネットワーク事務局長
特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター理事
小松久子
チャイルドライン(以下CL)は子どもの権利条約が締結された1990年代、俳優だった故牟田悌三さんや当時ジャーナリストの保坂展人さんが視察に訪れた英国から日本に持ち帰り、1998年に世田谷で始まった。現在都内にはCLすぎなみを含め11団体、全国では68団体でボランティア約1800人が子どもの声を受けとめる。私は10年前からCLの活動にかかわってきた。
CLのミッションは2つあり、18歳までの子どもの声を聴くことと、それを社会に発信すること。声を聴くツール、電話とオンラインチャットは、「受け手(おとな)」が子どもに寄り添い、会話を通して一緒に考えることで子ども自身の自己決定をサポートする。これに24時間 HP上に書き込み自由の「つぶやく」と合わせて3つが活動の柱だ。
1年間に着信する電話は約16.5万件(うち会話成立は3.8万)、チャット書き込みは3.7万件(対応件数は1.5万)、「つぶやく」書き込みは2万件。入電数が減少傾向にある一方チャットの件数は増えており、低年齢化が進む。「つぶやく」はコロナ下の2020年に始めたものだが、匿名で気持ちを吐き出せる場として定着し、「死にたい」「親が怖い」「自分がイヤ」など生々しい言葉がつづられる。
子どもの自殺が過去最多の513人と発表された2023年、CLが「子どもの自殺をなくすためにおとなができること」について子どもにアンケートを実施したところ、多かった回答は「子どもの話を否定せずに聴く」「相談しやすい環境をつくる」だった。CLにアクセスした子ども8割の動機が「話を聴いてほしい」であることからも、「子どもの声を聴く」場が必要とされていることが明らかだ。
こども基本法の制定により、子どもの意見を聴取し施策に反映させる取り組みは広がっている。児童養護施設や一時保護所でのアドボケイト導入も進む。だが学校ではどうか。子どもが長時間過ごす場であり子どもの辛さやいじめ、劣等感などを生み出す学校にこそ、アドボカシー制度が必要ではないか――そのように考え、CLは昨年度、文科省に提言を届けた。今年の提言は性教育をテーマにと議論を始めている。包括的性教育は生活者ネットワークがいつも主張している重要政策だが、CLとしても子どものリアルと向き合ってきた経験から提言をまとめたい。
2025年春には子どもの権利条例制定が予定されている杉並区でも、これを子どもの市民権の確立に向けた大きなステップとして、子どもが生きていこうと思える社会づくりを進めたい。
チャイルドライン
■電話(統一番号フリーダイヤル)
電話番号:0120-99-7777(日本全国共通/携帯電話、公衆電話も通話無料)
実施日時:毎日16時~21時(年末年始は休止)
■オンラインチャット
チャイルドライン支援センターウェブサイト上に専用ページ設置
https://childline.or.jp/chat
■つぶやく
チャイルドライン支援センターウェブサイト上に専用ページ設置
https://childline.or.jp
実施日時:24時間365日書き込み可能