いのちと人権を守るLGBT法を!~修正案にひそむ差別こそ解消していくために~
LGBT法案をめぐる議論が大詰めを迎えています。
5月15日、LGBT法案の後退に抗議する当事者団体等による緊急院内集会が衆議院第二議員会館で開催され、自民党の修正案に対し強い怒りの声があがりました。
LGBT法案については、もともと「多様性と調和」を掲げた東京2020オリンピック・パラリンピック前の成立を目指していた経緯があります。しかし差別解消を目指すのは性急との意見があり、理解促進法として超党派で議論が進められましたが、それさえも成立には至りませんでした。
今回は、議長国として広島で開幕するG7サミットを前に、議論が高まりました。G7サミット参加国でLGBTQに関する差別禁止規定や法律がないのは日本だけです。同性婚についてもそれに準じる制度も含め、日本以外の国ではすべて認められています。
このような現状下、何とか議長国としての面子を保つためか、G7サミット開幕直前に与党修正案が国会に駆け込み提出されようとしています。それ自体は前進ですが、問題は修正案の中身です。
修正案では「差別は許されない」という文言を「不当な差別はあってはならない」に、「性自認」という言葉を「性同一性」に、「学校の設置者の努力」という文言を削除するなど、超党派案から数々の後退や誤認の要素があり、当事者からは「むしろ差別を増進しかねない」と懸念の声があがっています。与党からはできることに意義があるという声がありますが、当事者の声を置き去りにし、一部の保守層に配慮した修正案は、むしろ日本の後進性を露呈するものです。
国際社会に同調しているフリをするのではなく、本気で差別をなくしていこう、そして子どもたちが苦しまないですむ社会をつくっていこうとメッセージが感じられなければ、せっかく長い時間をかけて検討されてきたLGBT法に命が吹き込まれません。
「性教育だって十分にできていないのに、LGBTの教育をしてどうするんだ」「子どもが混乱する」といった一部の反対意見により、7条「学校設置者の努力」が削られ、事業主などの項目の中に格下げとなっています。誰にも話すことができず、いじめ※1や疎外感から消えてしまいたいという思いに苦しむLGBTQの子どもたちも多く※2、教育現場の役割は非常に重要なものです。
いのちに関わる喫緊の課題である認識がないことに対して、生活者ネットワークとして強く抗議します。
東京・生活者ネットワークは、都内の各地域でパートナーシップ制度の導入や、教員への研修、子ども達への教育、相談支援体制の構築等に力を注いできました。国に同性婚や差別禁止の法がないため、自治体が先駆的に取り組んできたものです。今では全国で300を超える自治体でパートナーシップ制度が導入されています。
日本経済新聞の直近の世論調査によると、同性婚に賛成が65%で、反対24%を大きく上回っています。また先日渋谷で開催された「東京レインボープライド2023」では、実に延べ24万人(主催者発表)が参加し、性と生の多様性を祝福しています。岸田総理は「(同性婚を認めれば)社会が変わってしまう」と懸念しますが、社会の意識はとっくに変わっています。法整備が追い付いていないのです。
LGBTQのみならず、女性、障がいのあるひと、子ども、外国人、すべてのひとがありのままの自分を認め、お互いを尊重する社会をつくることは、憲法で保障された基本的人権の尊重につながります。生活者ネットワークが掲げる「私らしく生きるための政治」そのものです。
生活者ネットワークとしてはLGBT法案について、理解増進では不十分であることを踏まえつつ、法制化の第一歩として、自公修正案でなく超党派案での成立を強く望みます。そして、次のステップとして差別禁止法に進むことがあるべき方向と考えていることを表明します。
2023年5月18日
※1 10代の当事者のうち、47%がいじめにあった経験がある(宝塚大学看護学部日高教授「第2回LGBT当事者の意識調査2019」より)
※2 10代LGBTQは過去1年に、48.1%が自殺念慮、14.0%が自殺未遂、38.1%が自傷行為を経験。日本財団の「日本財団第 4 回自殺意識調査(2021)」と比較し、10代LGBTQの自殺念慮は3.8倍高く、自殺未遂経験は4.1倍高い状況にある(認定NPO法人ReBit「LGBTQ子ども・若者調査2022」より)