食べることは生きること――持続可能な農業政策で食料主権の実現を!
2923年3月17日
東京・生活者ネットワーク
長引くコロナ禍に国際状況の不安定化と円安が加わり、国内の農・畜産業が大きな打撃を受けています。とりわけ、畜産業は国の政策に翻弄され、生産者は廃業の危機に直面しています。食という人々の生存にとって最重要であるはずの食料政策を経済効率性優先に捉えてきた失策をいまこそ転換するべきです。
日本の食料自給率はカロリーベースでわずか38%、生産額ベースでも63%で、いずれも低下し輸入依存度が高まっています。農業従事者も20年間で半減、農地は10%減っています。ロシアのウクライナ侵攻による食料輸入の規制や燃料高騰によるコスト上昇という直接・間接の影響から、生産コスト上昇の波が押し寄せ、食とエネルギーを自己調達することの重要性を、生産者も消費者もあらためて実感しています。岸田首相はいち早く防衛費倍増を打ち出しましたが、基礎的食料を自国で生産する食料主権が確立していない国で、果たして「国民を守る」と言えるのでしょうか。
政府は、ランニングコストの急上昇で疲弊する酪農対策として、乳量が少ない牛を処分するための奨励金に50億円を拠出することを決めました。いっぽうで、農家への支援につながる配合飼料価格安定制度や配合飼料高騰緊急特別対策の補助金は効果が薄く、経営改善への影響は焼け石に水と言われています。
そもそも、国はTPP(環太平洋パートナーシップ)への加盟により、国際競争力を高めるためと称して畜産の大規模化や機械化をすすめ、農家も増産に応じてきました。それが一転して生産規模の縮小に転換するのは、あまりにも場当たり的な政治姿勢です。主権者である私たちは、いのちの根幹である食料政策に対する現政権の態度を許すことはできません。
生活者ネットワークは、食の確保は生産・流通・消費の全プロセスにおいて環境と健康に配慮した持続可能性が必要であると考えています。だからこそ、市場における競争性にのみを価値をおく経済最優先の自由主義的な農政策を批判し、国内生産者を守ることやトレーサビリティ(生産から消費までの全過程を追跡できるしくみ)を求め、生産者と消費者が顔の見える関係の小規模分散でリスク回避やたすけあいができる「地産地消」を提案してきました。
競争による奪いあいや生産効率最優先の発想では、食の持続可能性は実現しません。オーガニック(有機)農産物へのシフトも、生産者が無理なく着実に移行できるしくみを、行政が地産地消の発想でつくりすすめていくことが必要です。
生活者ネットワークは、地域政党として40年にわたり農薬や遺伝子組み換え・操作(ゲノム)、放射能汚染対策など「食の安全」を政治の場で訴え、東京都では食品安全条例をつくりました。今年に入り、食料・農業・農村基本法の見直しが始まっています。自然と人材を大事にする持続可能な食料生産こそ真の意味での平和実現の安全保障であることを国は肝に銘じ法の精神とすることを強く望みます。