GDP比で2%以上とする規模ありきの防衛予算方針に抗議します
政府は6月7日、経済財政運営の指針「骨太の方針」を閣議決定し、防衛力を5年以内に抜本的に強化する方針を明記しました。防衛費を国内総生産(GDP)比2%程度に増額することを念頭に置いたもので、防衛力強化の理由には、ロシアのウクライナ侵攻などにより、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国防費の目標としているGDP比2%以上を例示しています。
2022年度の国家予算において防衛費は約5.4兆円でGDP比は1%弱。これを2%に増やすと年5兆円以上の新たな増額が必要になります。少子化対策費が4.4兆円、生活保護給付などに充てる生活扶助等社会福祉費が4.8兆円というなか、それらに匹敵する規模の増額をしないと、対GDP比で2%には達しないということです。
すでに、現在の日本の防衛費は世界で9位ですが、倍増して2%とすればアメリカ、中国に次ぐ世界3位となります。一方、現状で教育費は先進国中で最下位、また国民一人当たりの賃金時給も低迷状態が続いています。
そもそも、日本の防衛費を、相互防衛義務を負うNATO加盟国と同列に扱う合理性があるのか、平和維持のために日本が果たすべき役割は何かの国民的議論がないままに、岸田首相がいち早く軍備拡充を表明し、閣議決定した乱暴さに危惧を覚えます。
政権の方針に対しては、与党自民党の中からも「現行憲法下で、わが国の自衛権は必要で最小限でなければならず、最初に金額目標があり、そこに届くまでどんどん買い足していくような乱暴なやり方は、日本の防衛力整備のあり方としてふさわしくない」という声があがっているほどです。
また、その防衛費増額の財源をどう手当てするのかも不透明です。自民党内では国債を発行して充てるべきとの意見が強固ですが、「戦時国債」発行で軍備拡張を推し進めた過去の過ちを繰り返すべきではありません。財源を国債に頼るようなら、しわ寄せは将来にわたって子どもたちに及ぶことになります。
平和は、緻密で冷静な外交努力と市民レベルでの文化・教育・経済交流の継続によってつくるべきであり、軍事拡充に頼らない方法で国際紛争を未然に防ぐことこそが政治の仕事であると、生活者ネットワークは主張します。予算増は、コロナで疲弊し、格差と貧困に苦しむ国民に寄り添った政策にこそまわすべきです。
対GDP比2%を実現するために、ほかの経費を減らしてでも防衛費を増やすという方針は到底納得できるものではなく、ここに強く抗議するものです。
2022年6月10日
東京・生活者ネットワーク