東京都環境局地球環境エネルギー部に報告——都内62自治体の電力調達の状況に関する調査

東京・生活者ネットワークは、今年2月から4月、パワーシフト・キャンペーン運営委員会(事務局:国際環境NGO FoE Japan)、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのメンバーらと、都内62自治体に向けて、「自治体の電力調達の状況に関する調査」を行った(回答率100%)。
このたび調査結果がまとまり、7月9日、東京・生活者ネットワークの山内れい子都議同席のもと、東京都環境局地球環境エネルギー部と面談、続いて都庁記者クラブを会場に結果を記者発表した。

東京都環境局地球環境エネルギー部と面談し、「東京都内自治体の電力調達の状況に関する調査2020報告書」を手渡す、パワーシフト・キャンペーン運営委員会(事務局 FoE Japan)、東京・生活者ネットワーク、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのメンバー。2020年7月9日

自治体の電力調達の状況に関する調査から見えてきたこと――2016年度をピークに新電力への移行は停滞傾向に

電力システムの改革や電力小売全面自由化を機に、全国で多数の新電力会社が発足するなど、電力小売をめぐる状況が変化している。そうしたなかで、とくに自治体による電力調達は規模も大きく重要な役割をもっていることから、都内62自治体を対象に、電力調達の状況やその方針を可視化し、望ましいあり方を考察することを目的に調査を行った。

◆調査内容は、
1.本庁舎の電力調達先(2011~2020年度)
2.電力調達に関する方針
3.再生可能エネルギーに関する方針、など。

◆今回の調査の注目点は、
1.一時は大手電力会社離れが見られたが、いま巻き返しが起きている。2011年までは4自治体(千代田区・北区・昭島市・国立市)を除く58自治体は東京電力株式会社(以下:東電)から調達していた。しかし、原発事故翌年の2012年度は15の自治体が、電力の自由化が始まった2016年度には25の自治体が新電力からの調達へと移行した。しかし、それをピークに今年度は16(未定4)と減っている。今回の調査で、大手電力の巻き返しが起きていることがわかる。もちろん、新電力会社が供給する電気の由来(化石燃料か再生可能燃料か)を見ていかなくてはならないことは言うまでもない。
2.7割以上の自治体が電力環境配慮調達に関して、何らかの取り組みを行っていることがわかった。しかし、それが再エネ調達に必ずしもつながってはいない。なぜか。多くは国から示される基本方針を参考にして自治体方針を策定しているにとどまっているから。そのなかで再エネの調達を進めている世田谷区、江戸川区は、再エネ割合を高く評価する独自の環境評価を導入しており、参考にしたい。
※国は「環境配慮契約法」制定(2007年)。価格に加えて環境性能を含めて評価し、最も優れた製品やサービス等を提供するものと契約するしくみをつくることをめざす。国と独立行政法人は義務、地方自治体は努力義務。
3.他地域の自治体と連携して再エネ調達を行っているのは港区(福島県白河市:太陽光、山形県庄内町:風力、青森県平川町:バイオマス)、世田谷区(長野県:水力、群馬県川場村:木質バイオ、青森県弘前市:太陽光)、目黒区(宮城県気仙沼市:木質バイオマス)。他の自治体でも、他地域自治体との連携による再エネ調達の可能性は大きい。

報告書はこちらから

 

都の「ゼロエミッション東京戦略」を実現に向ける――自治体が主体的に温暖化対策・エネルギーシフトに取り組む、そのためのバックアップが東京都に求められている

「電力調達で重視する点」の回答で2番目に多かったのが「CO2排出係数」、3番目が「再生可能エネルギーの割合」。では1番目は何か。「価格」と答えた自治体が一番多かった。また、再エネ調達を進めていくうえでの課題を尋ねた項目でダントツの答えが「財政上の制約」であった。
今回の調査結果は、東京都環境局地球環境エネルギー部に報告、東京都との意見交換をおこなった。現在、都が取り組んでいる「ゼロエミッション東京戦略※」では、気温上昇を1.5℃に抑えることをめざし、2050年までに「ゼロエミッション東京」を実現するとしている。そのためには、都内の各自治体が環境政策の一環として主体的に温暖化対策・エネルギーシフトに取り組む必要があり、そこを後押しする東京都の役割は非常に大きいことを指摘。都環境局に具体提言を示す場となった。
※ゼロエミッション東京戦略:2019年12月27日発表。東京都は、2019年5月、U20東京メイヤーズ・サミットで、世界の大都市の責務として、平均気温の上昇を1.5℃に抑えることを追求し、2050 年に CO2 排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言した。「ゼロエミッション東京戦略」は、その実現に向けたビジョンと具体的な取り組み・ロードマップをまとめたものである。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/policy_others/zeroemission_tokyo/strategy.html

「東京都内自治体の電力調達の状況に関する調査2020」報告を記者発表。左から、都議山内れい子、練馬区議きみがき圭子、FoE Japanの吉田明子さん、品川区議の吉田ゆみこ、グリーンピース・ジャパンの鈴木かずえさん。2020年7月9日、都庁記者クラブ

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