特別定額給付金――自治体は世帯主だけでなく個人に行き渡るための努力を!

2020年4月23日

東京・生活者ネットワーク

  この度の新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言に伴う休業要請により、多くの国民が職業や住居までもなくす危機に瀕し、人々の生活は混乱をきたしています。緊急経済対策として、迅速かつ的確に支援するために、複雑な条件の下30万円の給付を行うことから、一律一人10万円の給付となりました。

しかし、その申請と給付の方法については、受給権者を「世帯主」として、世帯単位で世帯主が申請をし、世帯主の口座に家族全員分一括給付を基本としています。一刻も早い給付は大事ですが、このままでは必要な方に届かない恐れがあります。

内閣府と総務省は「配偶者からの暴力を理由とした避難事例における特別定額給付金関係事務処理について」(4月22日付)として、DV等被害者への対応についての通知を出し、一定の配慮をしていますが、配慮が必要な事例は、DV等被害者だけではありません。世帯のあり方は多様であり、DV等被害者に加え、虐待を受けている子ども、施設入所者など、配慮が必要であり、同居していても関係性が悪く、世帯主が全てを取り上げてしまう可能性など、本当に必要な人にまで届けられないのではないかと危惧するものです。

これまでもリーマンショック後の定額給付金や東日本大震災など災害後の支援金についても、世帯単位での支給により、世帯主が使い道を決定する権利があるごとく、世帯員が手にすることができなかったというようなトラブルも起きています。この背景には男性戸主という家父長制の名残がありジェンダー平等の視点からも是正する必要があります。また、現在は働き方が多様化し共働き世帯は、夫のみが働く世帯の約2倍と主流であり、世帯主が養うという考え方は現実とかけ離れています。受給権者は、本来世帯主ではなく、すべての個人であるべきです。

給付対象者は、基準日(4月27日)に住民基本台帳に記録されている人全てですから、個別にするか同一にするかを選択できるような工夫をするなど、自治体での検討を強く要望します。多様な家族像を念頭に置いた給付事務の実施、外国人や障がい者に配慮した周知も重要です。

加えて、特別定額給付金を受け取らないような風潮は阻止すべきです。個人が必要なければ、NPO法人や社会福祉法人など社会事業を通して必要な人に寄付をする文化を広げていくべきです。

海外での支援金給付が速やかに行われた理由の一つには、社会保障や税のほか、国の施策が世帯単位でなく個人単位で制度設計されていることも関係しています。新型コロナ感染の終息の見通しはついておらず、今後も給付金が実施される可能性もあります。世帯主主義を見直し、個別申請・給付を求めることは、家族構成や性別にかかわらず、一人ひとりの自立を進めていくこととなり、コロナ禍から多くの人を救うとともに、終息後の社会の変革となる大きな一歩になると確信し、強く求めていきます。

以上

東京・生活者ネットワーク「女性の安全・安心調査プロジェクト」の学習会

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