障がい者雇用「水増し問題」に抗議する

中央省庁が雇用する障がい者の「水増し」問題について、政府は8月28日の関係閣僚会議で、2017年6月1日時点の水増しが計3460人に達していたと発表した。厚生労働省の指針に反し、33行政機関のうち27機関に水増しがあり、法定雇用率が0%に下がった機関は17になった。昨年12月、中央省庁は計6867.5人(短時間労働者は0.5人と算定)の障害者を雇用していたと発表していたが、再点検の結果、法定雇用率は2.49%から1.19%に半減した。

民間企業であれば、法定雇用率を下回れば納付金を徴収され、障がい者雇用の実態を厚労省に報告する義務があり、虚偽報告には罰則もある。しかし、中央省庁には罰則がない。

会見で厚労大臣は「深くおわびする」と陳謝し、第三者による検証にゆだねるとしたが、40年余にわたって不正を正せなかった厚生労働省の責任は重大である。障がい者だけでなく、多くの国民が今回の水増し問題で政府への不信と憤りを抱いたことは間違いない。

法律を順守しなければならない中央省庁が長年にわたり、障がい者をあたかも雇用したかのように見せかけ、ガイドラインを無視した偽りの雇用数と達成率の公表は、障がい者の働く機会を奪い、社会参加の選択肢を制限してきたことであり、本来、あってはならない言語道断の人権侵害に他ならない。その背景には、障がい者に対する偏見や無理解があったのではないか。

政府は今後、弁護士などによる第三者委員会で問題の原因を検証するほか、地方自治体についても10月までに点検を行い、法定雇用率の達成に向けた採用計画の策定も検討する。さらに10月中に再発防止策をまとめるほか、2019年12月までに法定雇用率(2.5%)を達成できるよう障がい者の採用を急ぐとしている。しかし、短期間で法定雇用率を達成しようと採用に突き進むことは、無理をして障がい者の適性と仕事のミスマッチが起こりかねず懸念される。

今こそ障がい者雇用への理解を職場で深めながらじっくり取り組みことが必要ではないか。

東京・生活者ネットワークは、共生社会の実現に向けて、政府が率先して障がいに対する意識改革を進め、障がい者と共に働くことの意味を今一度問い直し、 当事者を含めた第三者委員会による徹底した実態把握と原因究明、再発防止を強く求めるものである。

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