共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案に反対する声明
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共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案に反対する声明
2017年4月6日
東京・生活者ネットワーク
政府は3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という)を閣議決定し、国会に本法案を上程、6日からの審議入りを目している。犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」がテロなどの犯行を計画し、メンバーが現場の下見や資金調達などの準備を始めた段階で処罰するもので、277の重大犯罪が対象であるとされる。
これまで人権を侵害する危険性が高いと3度廃案になったにもかかわらず、安倍首相は今国会の冒頭で「国内担保法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結させなければ、東京五輪・パラリンピックを開けないといっても過言でない」と表明し、テロ対策として共謀罪法案が五輪開催に不可欠だと述べている。
しかし、国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約(以下「国際的組織犯罪防止条約」という)は、マネーロンダリング、違法薬物・銃器の密輸・密売、売春目的での人身取引等の犯罪を、利得を目的として継続的に行う集団(日本で言う「暴力団」、外国で言う「マフィア」)を取り締まることを目的とした条約である。条約の批准に際しては、同条約の公式「立法ガイド」も、各国の刑事法の諸原則に基づく法整備を求めるのみで、共謀罪の導入は条件にしていない。すでに日本はテロ対策を目的として、爆弾テロ防止条約、人質行為防止条約、航空機不法奪取防止条約等、13本の条約を締結し、国内法も整備している。東京オリンピックを控えたテロ対策を、同法案が必要な理由として挙げているが、政府の説明はきわめて不十分であり、納得のいくものとは言い難い。
近代刑法の基本原則は実際の行為や結果が生じなければ処罰の対象とはならないが、「共謀罪」では、計画したことが犯罪となる。処罰を免れるには「自首」することしかなく、密告を奨励することにつながりかねないとも言われ、戦前の治安維持法による監視社会化を招く危険性がある。政府は「一般の人には適用されることはない」と説明しているが、組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪をも対象に含んでいることから、拡大解釈によって、自分の意見を言ったり、抗議する(表現の自由)、仲間と集まって交渉する(集会結社の自由、団結権)等、行政の無策への反対運動やあらゆる権利運動が対象になることが想定され、憲法で保障されている基本的人権、「思想・信条の自由」の侵害になりかねない。
よって、東京・生活者ネットワークは、監視社会化につながり、市民の人権や自由を侵害するおそれがある本法案の制定に強く反対する。