都議会百条委員会:豊洲新市場移転問題に関する調査特別委員会 経過報告-2
都議会百条委員会:豊洲新市場移転問題に関する調査特別委員会 経過報告-2
3月18日、東京都議会で豊洲市場移転問題の調査特別委員会(百条委員会)が開かれ、東京ガスが所有していた豊洲の用地取得の経緯、土壌汚染対策にかかる経緯などについて、都の歴代市場長:森沢正範氏、比留間英人氏、岡田至氏、中西充副知事の各位の証人喚問を行った。都議会生活者ネットワークからは、小松久子[杉並]が代表し質問に立った。
2回目となった18日の都議会百条委員会。各委員の証人喚問に、歴代市場長4人が証言。豊洲の土壌汚染対策にかかる負担をめぐっては、都が東京ガスに大幅に譲歩していたことなどが判明。都議からは、豊洲市場の土地売買契約で最終的に860億円に上った土壌汚染対策費について、東京ガスの負担分を78億円とし、その後の負担を求めなかったことは「瑕疵担保責任の免責に当たるのではないか、といった質問が相次いだ。
一方、岡田元市場長は、「確認書を踏まえて協定合意に至った。そもそも条例に基づいて手続きを完了しており、都も確認している。瑕疵担保責任については都が放棄したというものではない」。他の3人も、「過去の経緯で決まった」「交渉に立ち会っていない」「承知していない」などと発言。それぞれが濱渦氏と東ガスの「基本合意」を引き継いで、実現に向けてきたまでと強調した。
◆3月18日 森沢正範氏、比留間英人氏、岡田至氏、中西充副知事 歴代元市場長への、生活者ネットの証人喚問(一問一答)
小松●豊洲市場候補地は以前には豊晴開発計画があった。都も参加して区画整理を行っていたわけだが、この頃に土壌汚染対策の必要性についてどの程度認識があったのか疑問に思っているところである。森沢証人が市場長を引き継いだときはすでに市場用地として豊洲と決まっていた(正式決定はH13年12月)ということである。先ほど汚染された土地であることで危惧されていたとのお話もあったが、この汚染の状況や調査結果(東京ガスも調査を実施している)について、どのような認識、引き継ぎがあったのかどうか。
森沢●引き継ぎは全般的な話で、土壌汚染は当然あるというふうに。私が市場長を引き継いでから取り組んだときには、すでに東京ガスとの合意書があって、その後いろいろまちづくりの内容を示したものもあって、7次中央市場整備計画もすでに決定していて、豊晴計画も確かH14年中に再改定されていると思う。そういうことで、政策決定も、まちづくりのためのフレームワークも決まっていて、あとは実現に向かって、そういう時代だった。仰せの問題も先ほど来申し上げているように承知していた。
小松●汚染があることは東京ガスも東京都も重々承知していたけれども、と。先週、福永元副知事、大矢元市場長にもおいでいただき、そのお話を伺っていて、土地の譲渡の交渉の中で、この土壌汚染対策には重きが置かれていなかった、というような印象を受けた。そうした中で、H13年、14年合意というかたちで土壌汚染対策について環境確保条例に基づいてされた後、環境局から、やり取りについての要請や交渉が数回にわたってされたと思う。やり取りでは処理のレベルや方向について、東京都と、東京ガスでは認識に開きがあるのではないかと伺える。やり取りをする中でこの認識の開きは埋まったか。H17年5月の確認書と、処理のレベルを協議してきたその経緯を伺う。そして、環境局は上乗せを要請したわけだが、環境局はそのことで納得したのか。
森沢●H17年5月の確認書、これは市場当局にとって大事な確認書で、今まで環境確保条例に基づく処理といった内容、要するに汚染が残るような処理の内容だったものを、処理の範囲まできちっと決めていただいた確約書である。このおかげで、次の用地収得の契約のときの条文にきちっと書けるようになった、といった市場局にとっても大事な問題であった。それをつくるにあたって、当初開きがあったということはおっしゃる通りで、抽象的に責任を果たしたということと、とりあえず全部きれいにしてくれ、と。そういう議論で進めても埒があかないわけで、東京ガスと東京都で、具体的にどの範囲でやるか、2年かけてやってきたということ。具体的にどの範囲で、どこをやるか、ということをやってきた過程だったということ。で、環境局の役割は、ここは条例所管局であるから、法に基づく届出があって、それが内容的に正しければ、それを受理して内容通りやらせるというスタンスであるから、直接所管局が内容に対してもっとやれとか、なかなか言えない立場であると・・・その分を言うのがまさに市場当局であり、交渉の窓口である知事本であると。環境局との関係は、専門家としての知識をわれわれ同僚が教えてもらう、そういう関係だと理解している。
小松●これが文章として、17年合意につながっていくと思われるが、処理を行う東京ガス、東京都、特に環境局が求める処理レベルとの認識のギャップがその後の、汚染工事完了後の汚染が残された(現況の)事態につながったものではないかと考える。H17年5月の確認書、ここでは環境確保条例に基づく処理に加えて、土壌汚染対策防止法を受けてさらにAP2メートルまでの追加処理が追加されている、具体的にはどのような対応を指すか、確認のために伺う。
森沢●環境局と東京ガスとの認識のギャップというのは、所管局としては、そういう形で受け止めてはいないのでは、と私は思っていて、要は環境局は拡散防止計画が出されればその内容をチェックする、内容が正しければ、それを受理するということだと。したがって拡散防止計画というのは、どこまでやるかは、それを申請する人が頑張るのであって、法で求められていることが書いてありさえすれば、それはそれで合法的な届出になるので。したがって処理内容をどうするかは、まさに交渉の問題であって、どこまでやってもらうかは当事者同士でガリガリ詰める、そういうプロセスになる。内容的にどこまでということは、先ほど来申し述べたとおりで、すべてやるということになればそれはもう、土地全部をそっくり入れ替えるということにもなりかねないわけで、少なくともこの範囲でという一つの線として、形質を改変する範囲まではやってもらおう、それだけやれば、とりあえず安全な市場用地が購入できると、そういうレベルをめざしたという経緯である。
小松●措置終了後の「瑕疵担保責任」についてどのように考えていたかだが、「処理を確認後に汚染が見つかった場合には、当然処理のやり直しをする」ということではなかったのか。
森沢●拡散防止計画を提出して完了後、届けを出して、専門機関が完了届を確認して終了する。したがって、その後どうするかは、また別の話。H17年5月の確認書、ここまでやっていただくという合意ができた時点で、将来のさらなる負担であるとか、そういう議論はしていない。したがって、「瑕疵担保」がどうの(免責がどうの)ということではなくて、通常の合意=将来何かあれば見直す、そういう通常の合意を持って済ましているだけで、その後の議論は全くなされていない。
小松●しかし、「汚染が見つかってもやり直しをしないということであれば、H17年合意に基づくこの先の瑕疵担保責任の放棄につながっていくのではないか」「H17年合意に基づく対応がされていればそれでよし、それ以上(汚染が見つかっても)求めない」、そういう内容を、H17年合意はすでに含んでいたということか。
森沢●環境確保条例のもとになる土対法自体が、経路遮断ができれいればよいということで東京ガスが出した計画書が、これにかなっている、合法的であるということで受理されており、それに対して、まだ(汚染が)残っている、いないというのはまた別次元の話ということになろうかと思う。交渉というのは、そういうことがないようにどこまできっちりやるか、そういう認識でいた。
小松●都は、H16、H18に豊洲鉄鋼埠頭と土地の売買契約を交わしている、H16契約では埋設残留物処理と土壌汚染処理について、また瑕疵担保責任についても項目があり、記述がある。しかしH18年の契約ではこれがない、この理由について、H22年の予算特別委員会で質疑が行われており、当時の岡田市場長が、H16年の契約は換地まえの契約であるからと答弁している。しかし契約当時の市場長は森沢証人であるので、H16、H18年の記述の構成が違っている、この理由はなぜか伺う。
森沢●その契約書を確認していないのでくわしいことはわからないのだが、H16の、最初に土地を購入した先がまさに鉄鋼埠頭。このときの土壌汚染対応については17年合意がまだない段階、したがって東京ガスが主張する環境確保条例をきちっとやる、そういう内容をきちっと契約に記載した。瑕疵担保は当然入れていると思うが、残留物についても東京ガス、あるいは他の地権者とも契約しているが、これは少しかたちが違ったと。要は都が実施した後におカネをいただく。それも現金を動かすのではなく、地価で相殺していただくとか、たしかそういう話であって、瑕疵担保という概念は無いのではないか。今この程度のことしかお答えできないで恐縮だが。
小松●18年には比留間市場長だったわけだが、H16年の契約では瑕疵担保がある、しかし18年にはない。このことについていかがか。
比留間●私が市場長だったときに、二件の土地売買契約を結んでいる。その一つが鉄鋼埠頭の仮換地であったと思う。いずれにしても土壌汚染にしろ、地下埋設物にしろ、別の契約で確認しているので。そちらを根拠にしているので、そこは別途確認を結ぶので、契約上はそこは結ばない、そういう考え方だったと思う。
小松●鉄鋼埠頭の土地について、瑕疵担保責任が入っている場合とない場合では、土地の評価額に差があるのか。
比留間●土地評価の問題に詳しくないのと、そもそも私が契約を結んだときには、鉄鋼埠頭の土地は鉄鋼埠頭のものではなかったので、今のご質問には答弁ができない、ご容赦願いたい。
小松●比留間証人が市場長だったときに専門家会議が開催されている。その後に1千倍のベンゼンが検出、翌年には4万倍、860倍と次々汚染が検出された。東ガスの、17年合意に照らしても対策が不充分であった、ということになると思うのだが、東ガスに対策のやり直しをさせようというようなお考えにならなかったのか、そういう議論はなかったのか。
比留間●他の方が先ほど来お答えになっているが、17年合意の土壌汚染対策に則して汚染拡散防止計画を東京都に提出して、それが19年に完了し、東京都が受理をしているが、おっしゃる汚染が検出された。ですが、専門家会議は、あそこがそもそも市場として使用される前提で調査を行った、さらに対策も念頭におきながらいろいろんな検討を行っていたわけで、法令をはるかに上回る、極めて厚い対策を講じていこう、という考え方であった。なので、負担の前倒しは別にして、東京ガスに対策をやりなおさせるとか、そういう問題は生じないし、そういうことは考えていなかった、と言うことだ。
小松●この専門家会議は徹底的に環境対策をするといった石原氏の強い意向で発足している。先週の大矢氏の証人喚問でも、この方針から、専門家が徹底的な対策への提言を行って、それに多大な費用を投じて東京都が環境対策を行うと、こういうことに対して市場では全面賛成ではなかった、といったニュアンスを感じたところだが、比留間さんが市場長だった頃は、この専門家会議の設置と対策についてどのように捉えていたか。
比留間●専門家会議、技術会議の設置、提言についていろいろな意見があったことは承知している。だが市場としてはそこまで綿密に、徹底的に議論をしていただいたうえで対策を出していただいた、技術会議には、それを具体化する方策を作成していただいて、私どもとしては、これを確実に実施していくことが責務であると認識していた。
小松●石原氏が知事だったときに、石原氏の提案で実施された「新銀行」が、行き詰まり、08年には400億円の追加融資が行われ、その後リーマンショックが起り、09年には税収入が1兆円の減収と財政が疲弊、契約した2011年まで都の財源が減り続けるという状況にあったわけだが、このとき、盛り土がなされなかった背景には汚染対策費を少しでも減額したいという意向があったとは言えないか。岡田証人に伺うが、盛り土をしないことについて、08年頃にコンクリートの箱を埋めたらどうかという石原氏の指示、または石原氏からの相談を受け決めた、ということはないか。
岡田●豊洲市場にかかるコストについて、できるだけコストを下げていくという命題はあるかと思う。しかしながら、市場の安全、安心につながる対策については、万全なものをやっていって、二重にも三重にもやっていって、みなさんに安心いただくということをずっと考えていたし、専門家会議、技術会議の提言、それを実行する、それをお約束することがわれわれがやることだと考えておった。したがってコストの面で安全・安心を揺るがすようなこと、それは考えたことはない。