都議会百条委員会:豊洲新市場移転問題に関する調査特別委員会 経過報告-1
都議会百条委員会(豊洲新市場移転問題に関する調査特別委員会)経過報告-1
3月11日、東京都議会で豊洲市場移転問題の調査特別委員会(百条委員会)が開かれ、東京ガスが所有していた豊洲の用地取得の経緯などについて、関係者の証人喚問を行った。都議会生活者ネットワークからは、小松久子[杉並]が代表し質問に立った。
最初に、元副知事 福永正道通氏と元市場長 大矢實氏については、豊洲移転を決めた時期のトップの責任者であった立場から質問。豊洲の土地取得にあたって、東京都の市場長であった大矢氏は東京ガスに足しげく通い熱心に先方を説得した。そして、その努力の結果として、東京ガスの公共事業に取り組む意義を呼び覚まし、交渉に応じて締結に至った、とされており、これにかかる経過を聞いた。「この当時、市場移転には40haの敷地面積が必要だということが最優先となっており、土壌汚染は解決できるという程度の認識だった」ことを確認。「石原元知事が都知事就任時は、築地での再整備の考え方が強かったが、有明北、豊洲、晴海など複数の候補地があがり、総合的に判断して、豊洲に移転することが適切と判断。石原元知事に進言した」と発言。これによって、記者会見で石原氏が「知事就任時には、豊洲移転は、既定路線だと福永副知事(当時)から聞いた」との発言は否定されたことになる。
生活者ネットワークの質問
□築地市場整備問題検討会は青島知事の時代に設置されたと聞く。設置の目的、与えられたミッションやメンバーはどのようなものであったか。
□移転への意見集約は、大きな方向転換であったわけだが、このことは当然知事に報告していると思う。1999年当時の石原知事は4月の選挙で初当選し、広く注目を集めた知事ということでもあった。築地市場の再整備問題は青島知事から引き継がれた緊急課題であり、市場長として速やかに報告したと思う。そのときの石原知事の反応はどのようなものであったか。
□福永証人、大矢証人に問う。この当時、バブル崩壊以降、地価が下落し、東京都の臨海開発のスキームがとん挫し、豊洲晴海開発計画も足踏み状態であった。そのため、都庁内で市場の豊洲移転を開発の起爆剤としたいとの意思が働いたとしても不思議ではない。都の港湾局から何らかの働きかけがあったのではないか。
□福永、大矢証人にうかがう。石原元知事は記者会見で、豊洲移転の決定は「組織の積みあげで決まり、知事が裁可した。みんなで決めたことだ」と述べたが、正式に決定したのは誰と考えているか。記者会見で発言した石原氏の発言について、どう思ったか。
□大矢証人に問う。2000年10月4日、濱渦副知事の随行として東京ガスを訪問し、このときに、土地価格や開発者負担金について、濱渦副知事から東京ガスに対し「水面下でやりましょう」との提案がなされている。「水面下」の詳細については関知していないとのことだが、随行者として、水面下とはどういうことだと思っていたのか。
□大矢証人、福永証人に問う。その後、環境基準を大幅に超える土壌汚染が明らかになったわけだが、今日、この状況にいたって、そのときの決断を是と考えているか・・・など。
引き続き、東京ガスについては、上原英治 元取締役会長/市野紀生 元取締役会長/岡本毅取締役会長/広瀬道明 代表取締役社長/伊藤春野 元代表取締役副社長/志水巨宜 元管財部開発グループマネージャー/高木照男 元管財部活財推進室長/丸山隆司 元大規模用地プロジェクト部長の8人の証人喚問を行った。豊洲用地の売却に難色を示していた東京ガス側が、2000年10月から石原知事の指示を受け、濱渦武生元副知事(当時)が交渉担当になってから、東京ガスは売却へと方針転換した。ここでは、水面下の交渉に証人喚問が集中。東京ガスとの交渉においては、「濱渦元副知事が、強い言葉で売却の判断を迫った」とも取れる記述がある資料の存在が判明しており、各委員からこのことが質されたが、東京ガス側は、「全く知らない資料」などと述べており、今後の濱渦元副知事の証人喚問時にも質されることになる。
生活者ネットワークの質問
□福永副知事から交代した浜渦副知事の訪問を受け、その後、水面下での交渉が開始されて合意に至った。2001年2月、濱渦副知事と当時の副社長の名前で覚書、7月には基本合意がかわされている。豊洲への市場移転を前提に具体的な協議に入る合意がなされているが、土壌汚染対策についての記述がない。この理由は何か。
□2011年9月、売買契約に至るまでに相当なやりとりが交わされ、一部負担の金額は、約78億円に確定している。結果として、今となってはこの後に土壌汚染対策にかかった費用の1割にも満たない額である。今後の費用負担の増減を行わないことも明記された。これは事実上『瑕疵担保』の責任を負わないということではないか。
□2008年に、東京都の調査により、大幅に基準を超える有害物質が検出されている。この対応については、この時点での土地の所有者はまだ東京ガスであり、東京ガスが追加対策を検討する、または議論することがあってもよかったのではないか・・・など。
◆3月11日 東京ガス関係者への、生活者ネットの証人喚問(一問一答)
小松●東ガスと都との関係について広瀬証人に伺う。都が御社に対して出資する、補助金を出す、御社が都の業務を受託することがあるか。
広瀬●すべて把握しているわけではないが、補助金等についてはいろいろな都の制度があるので利用させてもらっている。
小松●今回、御社が正当な企業活動として取り組んでこられた都との一連の交渉がこうして表に出ることによって企業イメージやCSR評価に影響がないとは言えないと思うが、これを回復するために今後どのように企業活動を進めていかれるのか伺う。
広瀬●一連の豊洲関連、少なくとも移転問題が出てから、その前の開発から2011年3月の契約まで、東ガスとして特に問題というか社会的なものについては問題はないと考えている。最近豊洲についていろいろなところで東ガスの報道がされて、東ガスの評判が少し棄損している。これについては一定の方向が出た段階で、改めて豊洲の発展に東ガスとしてもこれから責任、役割を果たすことによってカバーしていきたい。
小松●市野証人に伺う。高木証人のお話に、都と交渉開始して間もなくのころ、当時の濱渦副知事との質問と回答のやり取りの話があった。御社の副社長大野氏から福永副知事あてに「弊社豊洲用地への築地市場移転に関わる御都のお考えについて」の質問状が出され、豊洲用地は工場跡地であり(云々)・・・大変な改善費用を要することになる。これについてどうお考えかと質問がされた。6月27日福永副知事名で回答が出されている。「新市場の着工時期までにはその処理が完了することが必要です」という回答で、誰がやるとも、どこまで何をやるとも書かれていない。東ガスとしてこの答えの意味するところをどのように受け止められたか、御社の側がやるのだと思ったのか、この内容について互いに詰められたかと思うがこの点についてどうか。
市野●福永副知事と僕らの大先輩にあたる大野副社長とのやり取りは、そのころ私なんかまだチンピラ(ママ)なころで真意がわからない。まだ、お願いできないかという段階で、汚染対策をどうするというレベルじゃあなかったという感想を持つ。実際、やり取りの近くにいたわけではないのでわからない。
小松●このやり取りから、御社が土壌汚染状況を把握して、市場用地としてどうなんだと懸念を表明されていることが窺える。高木証人に、この質問の応酬のあと、実務者間の交渉の中でも汚染の程度、誰がどこまでやるんだということについて、具体的にやり取りや検討がされなかったのか。
高木●この段階では、築地市場の豊洲移転というのは豊洲の立地、ロケーション、広さ、モーダルシフトと当時いわれていた環境負荷の低い海上輸送を増やしていく、という立地価が高く、豊洲に移転したいという時期だった。汚染土壌については、汚染土壌対策法が施行されるとか、都の条例ができるとのことで、東ガスは準備を開始していたところなので、汚染土壌についての検討レベルは市場の移転というところで大きな意味を持っていたわけではないと思う。特に販売用の不動産という格好での取引きではないので(東ガスの固定資産を都に移管する話なので)、地面の下の問題というより地面の上の利用価値、使用価値に焦点が当たっていた時期だと思う。
小松●市野証人に伺う。翌年の2001年2月濱渦副知事と伊藤副社長の名で覚書、7月には基本合意が交わされた。豊洲への市場移転を前提に具体的協議に入る合意だと思うが、土壌汚染対策についての記述がない。この理由が何かわかるか。
市野●審議を進めていこうという主旨だったので、土壌の話は入っていなかったかと思う。役員会の資料にあがってきたものは、将来土地資産の移動があるかもしれない。これは、取締役会マターの問題だから合意を進めるよ、その結果として土地利用を伴うのでと、あがってきた。そういう意味で土壌は入っていない。
小松●伊藤証人に伺う。土壌汚染対策法が2001年5月に交付、この中には、法律施行以前に有害物質の取り扱いを廃止された施設を適用除外にするという付則の条文がある。これにより豊洲は法規制の対象とならないことになる。東ガスの環境汚染対策が平成(以下:H)10年から19年4月で終了。法からの規制の適用除外をつくるように、東ガスが国に働きかけたのではないか疑義を言う人がいる。御社が除外を画策したのではないとは思うが、念のため確認する。
市野●記憶にない。まったくないと思っている。
小松●この後2008年、都の調査により大幅に基準を超える有害物質が検出された。この対応について、土地の所有者は東ガスだったわけで、議論することがあってもよかったのではないか。
市野●具体的な中身について直接タッチしてないので、他の者が答えた方がいい。
小松●同じ質問を丸山証人に伺う。
丸山●専門家会議で新しい調査をすることが提案され、実際に調査した結果、43,000倍の、逐一状況を把握するということで承知している。どうするかについては都の中で検討されているということなのでその段階では状況把握に留まっていた。
小松●岡本証人に伺う。2011年9月、売買契約に至るまでに相当な都と御社とのやり取りが交わされ、一部負担金額は78億円に確定。(結果として今となっては、土壌汚染対策費用の1割にも満たない額だったが)今後費用負担の増減を行わないことが明記。事実上瑕疵担保の責任を負わないということになるのではないかと考えるが、御社としての見解をうかがう。
岡本●2011年の売買契約時に社長だった。署名するものとして責任を負っていた。私が決済するにあたり、あるいは取締会に決済を委ねるにあたり確認したことは、それまでの東ガス、東ガスグループと都間の長いやり取りの中で不適切なものがなかったかどうかという一点に絞られる。土壌汚染については環境確保条例、あるいはそれにプラスアルファしたものをわれわれが引き受けて、102億円という土壌汚染を完璧に実施した。その後、都で市場として使うためのさらなる調査が行われ、そのために追加的な対策が必要になるという話をいただいた。その時都から、東ガス以外からと思われる追加対策は200億強を要する、東ガスに要請するべきではないと承知しているが一部負担していただけないか、との申し出だった。私どもも、法的に責任がないものに巨額な支出をするわけにはいかないので、私どもとして関係者や株主、お客様が納得できるような、説明できるような金額ということを精査した結果、都との話し合いの中で78億というものが出てきた。それをもって私どもはやるべきことはすべてやり終えた、ということで、これ以上の負担は負わないという意味で「土壌汚染対策に関する瑕疵担保責任はない」ものだと思っている。
小松●この時、最終契約に印を押された岡本証人だが、最終的に契約が締結したここに至るまで10数年かかってさまざまないきさつがあったわけだが、その時の率直な感想を伺う。
岡本●築地市場の豊洲移転という大きな課題がこれで解決をするという大きなポイントという意味で、転機を迎えたということで大きな仕事の一つ区切りをつけたという意味で満足感を持った。ただ、仕事はこれからということなので豊洲の開発、市場の移転、私ども自身が行う豊洲の開発を含めて、まだまだ作業というか仕事はこれからだということだったから、それをいかにしっかりやっていくかということを改めて自分の胸に刻み込んだ、そんな心境だった。