派遣労働の現場から見た派遣法 改悪の構造と今後の闘い―女性派遣労働者当事者の視点から―
派遣労働の現場から見た派遣法 改悪の構造と今後の闘い
―女性派遣労働者当事者の視点から―
東京・生活者ネットワークは「女性の働き方」連続講座Ⅰ、Ⅱを4月から5月にかけて開催した。
連続講座の2回目は派遣向上フォーラム代表の渡辺照子さんを講師に「派遣労働の現場から見た派遣法 改悪の構造と今後の闘い」―女性派遣労働者当事者の視点から―というテーマで当事者としての立場からお話をいただいた。
派遣労働者として働いて16年
昨年9月派遣法が改正されたが、改正前に派遣先の社長から「3年雇止め」の通告を受ける。3年後は59歳になっており、次の派遣の仕事もなく、退職金もない。中高年の女性には介護や掃除しかなく、事務職という職務経験をいかせない。シングルマザーでは専門技能を身につける余裕もない。非正規は貧困と隣り合わせであり、今後シングルの高齢女性の貧困は深刻になることは間違いない。結局どういう男性と結婚したかで女性の人生が左右される。特に離婚した母子家庭に対しては、自己責任の問題にすり替えられ、社会の目は厳しい。
非正規労働者が毎年増加
非正規の女性労働者を取り巻く状況は年々厳しくなっている。1984年15.3%だった割合が2014年37.4%にあがり、労働者の3人に1人が非正規労働者だ。女性労働者の非正規雇用率は2015年56.7%と2人に1人。増加の理由としては労働者からは都合のいい時間に働けるから、家事などの両立ができるから、事業所側からは賃金節約のため、社会保険を払わなくていいといった内容が回答されている。一方NPOのアンケートでは正社員として働ける企業がなかった47%、正社員を希望するのは52.1%。派遣の68%が年収300万円未満、300万円以上は21%だけ。「生活が大変苦しい」「少し苦しい」とあわせると68%。派遣は雇用の調整弁でしかないことが現実だ。人権問題でもある。
可決された「改正」派遣法の影響
①派遣労働者の入れ替えなので、これでは「使い捨て」の合法化といえる。
②派遣労働者は一律3年で雇止めできるので、「3年ごとの失業」が恒常化する。
③雇止めで失業した派遣労働者に雇用安定措置を設けるというが、実効性がない。「努力義務」なら責任が問われない。
④教育訓練やキャリアコンサルティングの義務付けは派遣元ではなく、派遣先にすべき。
⑤派遣のまま、正社員と同様の業務をする
派遣労働者が声をあげる!
これまで派遣法を問題にするとき、「派遣労働者当事者が声を上げる必要がある」とよく言われた。派遣労働者を取り巻く状況にはさまざまな要因があったが、「自分の問題が他人の問題である」「個人の問題は政治的な問題」という視点がかけていたのではないか?
今回の改正派遣法が社会問題化したことで、反対運動の牽引力になったことは確かだ。目標とするのは「ディーセント・ワーク=人間らしい働き方」である。
今回の学習会を通して、企業の在り方も問うものとなった。最近企業はさまざまな社会貢献活動をしているが、本来の社会貢献は労働者に安心して働ける環境を保障することではないかという指摘があった。正規の労働者も他人ごとと思わず、自分ごとと考えていかなければならない。