伊方原発再稼働「同意」は白紙撤回を!~福島事故の原因も未解明、被害者への賠償も尽くされないままの再稼働は、許されるものではない~
――報道によると26日午前、愛媛県の中村時広知事は、伊方原発3号機(同県伊方町)の再稼働計画に「同意」の意を表明した。記者会見で知事は「火力発電や再生可能エネルギーは、原発に比べコストや安定供給などの面で劣る」「国の方針、四国電力に追加の安全対策を求めてきた中での事業者の姿勢、住民の議論を踏まえた」などと述べているが、その言説に再稼働を了承できる根拠は見当たらない。
――東京・生活者ネットワークは、今回の知事の「同意」表明に大きく遺憾の意を唱えるとともに、以下を主たる理由に、改めて伊方原発3号機の再稼働は断念するよう強く求めるものである。
▶福島原発事故が収束せず、原因究明、責任究明と処罰、被害者への賠償などが置き去りにされたままの原発再稼働は、許されるものではない。
東京電力福島第一原発事故はいまだ収束せず、放射能汚染対策・被曝労働は困難を極めている。事故原因の特定・総括、責任究明と処罰、被害者への賠償さえうやむやなまま4年7カ月が過ぎた。安倍総理が明言して恥じない、原発事故への「国の責任」表明は、人命・環境破壊などものともしない、再稼働促進のための「空手形」に過ぎないことは、福島事故の今が実証している。九州電力川内原発に次ぐ、中国電力伊方原発再稼働計画への知事の同意表明は、あってはならない事態であり、決して容認できるものではない。
▶原発は安価な電力供給源という再びの「原発神話」に、再稼働同意の根拠を見出そうとする知事発言に異議!そもそも四電管内で、原発再稼働が急がれる電力供給不足はない。
「原発を所有する電力会社の債務問題」からの当面の回避策でしかない国の原子力エネルギー政策を根拠に、原発再稼働に「同意」する不見識がまず問われなければならない。知事は、「発電コストが低廉(実際は、原発の発電単価は最高額)」「昼夜を問わず安定的に稼働(実際は、深夜余剰電力が発生し続ける不経済発電)」と原発の優位性を同意理由に挙げているが、原発電力は安く見積もっても1キロワット9円。3.11福島事故の前の、LNG・石炭火力7円と比べても、「原発コスは低廉」の嘘は明らか、使用済み核燃料問題や、福島事故が実証しているひとたび事故が起これば国費をつぎ込んでなお立ち行かない電力源である。また、四国地方全域を管内とする四国電力に、原発再稼働を急がねばならない電力供給不足は見出せず、四電所有の既存の発電設備で十分足りている。伊方原発で発電される電力は余剰電力であり、もっぱら関西電力への売電を目している。伊方現地や四国の住民にとってなんら必要のない、危険だけが押し付けられるような原発再稼働は認めるべきではない。
▶「新規制基準」による審査合格は、規制委が自ら認めているように安全の保障ではなく、そもそも中央構造線至近に立地する伊方原発は、あってはならない危険きわまる原発サイトである。
東日本大震災以来、地震や火山活動が活発化している。新規制基準では基準地震動の加速度を650ガルまで引き上げたが、他の原発において基準地震動を上回る地震が過去10年間に5回も発生していることと照らせば極めて不十分である。知事はさらに1000ガルまで引き上げるべく四電に要請としているが、現実には2007年新潟県中越沖地震(M6.8)での、柏崎刈羽原発1号炉の解放基盤表面はぎとり波は1699ガル、2008年岩手宮城内陸地震(M7.2)では、予測されていなかった活断層が動き、地表面で4022ガルにも達している。ましてや、伊方原発から中央構造線までは約8キロ、1596年には中央構造線と連動するかたちで「慶長豊予地震」が発生し、伊方周辺に10~15メートルの津波が到来した様が記録されている。このことからも、非常に危険な立地条件下にある伊方原発の再稼働は、断念するべきである。
▶安全性も経済性も度外視、核燃料サイクル政策の末に生み出された余剰プルトニウム消費策でしかない危険極まるプルサーマル発電は、断念するべきである。
伊方原発3号機は、ウランにプルトニウムを混ぜたMOX燃料を装荷する「プルサーマル」発電を採用していることも問題だ。ウラン燃料を前提に設計された原子炉でMOX燃料を使用することは、もともと危険な原発をさらに危険なものにすることからも、3号機の再稼働は断念するべきである。MOX燃料を入れた原子炉とウランだけを入れた原子炉とで運転サイクルの最後の時点で存在するアクチニドの量を比較すると、MOX炉心の方が5~22倍も多くなることが知られている。これは、重大な封じ込め機能喪失事故から生じる急性死や潜在的ガン死などの発現が、MOX炉心の方がずっと大きくなる可能性が高いことを示している。さらに問題なのは、プルサーマルに関しては規制委の安全評価がなされず、手付かずであることだ。福島事故を踏まえれば、プルサーマルの危険性を抱える伊方3号機の再稼働は認められない。
▶唯一内海に面して立つ伊方原発が原発事故に見舞われれば、燧灘、伊予灘、そして豊後水道と多様な特性を有した漁場が、瀬戸内海全域が壊滅的な被害を受けることになる。
瀬戸内海は、海流が一方向でなく往復流であることや、停滞性が強く極めて浅い海であることから、ひとたび伊方で原発事故が起きたら、海に降り注ぐ放射能、液体で流出する放射能双方の汚染に加え、プルトニウムの海底への沈着が危惧される。地表面へ降り注ぐ放射能もまた、川・湖を経て海を汚染し続け、瀬戸内海全域に壊滅的な被害をもたらすことになる。愛媛県は、燧(ひうち)灘、伊予灘、豊後水道と多様な内海を活かし、国内有数の水産県を誇ってきた。しかし、仮に伊方原発が再稼働し重大事故が起これば、漁業労働はもとより、農林業も含めて地域の生業を奪うことになる。過去に伊方原発周辺海域で魚の死滅現象が複数回にわたったことと、事故に至らなくても恒常的に海の汚染を引き起こす原発との連関は、なお調査対象とされるべきではないのか。
▶オスプレイの国内配備と岩国基地への飛来によって、米軍機墜落事故の危険性は一層強まっている。にもかかわらず伊方原発の安全審査では、この問題が一顧だにされていない!
愛媛県の空は米軍の管制下にあり、伊方原発が立地する佐田岬上空もまた同様だ。1988年、伊方の原発ドームから800メートルの山腹に米軍の大型ヘリが激突炎上し、乗員7人が死亡する大事故が起きている。このとき米軍は、地位協定を盾に事故現場を封鎖、事故報告書すら公表していない。沖縄で、国内外各地で、かつても今もなお事故が多発する米軍ヘリ。加えてオスプレイの国内配備と、「オスプレイ の常駐基地化」が必定とされる、伊方至近にある岩国基地へのオスプレイの飛来によって、米軍機墜落事故の危険性は一層強まることになる。だが、この重要問題が、伊方原発1~3号炉の安全審査では、完全に無視されている。国と四電の安全対策に根拠がないことは、この問題をとってみても明らかである。
▶PAZ、UPZ圏内の避難時間短縮策など期待できない!特にUPZ圏外とされた地域・自治体への事前・応急・中長期対策に国は無関心、無責任なままの再稼働はありえない。
伊方原発は、東西に細長く険しい佐田岬半島に立地しているが、重大事故発生時の緊急対策、収束要員の供給・支援や、国のPAZ、UPZ圏内における予防的・緊急時防護措置においても、住民避難計画との整合は依然不明確。避難時間を短縮する具体・画期的な方法が示されたとは認められず、加えて、UPZ圏外とされた、しかし事故発生時には甚大な被害を蒙ることになる瀬戸内の小島、離島などへの安全配慮について、政府機関の責任とその所在、支援のかたちも不明なまま。この現状での再稼働など論外であるし、仮に原子力災害対策や避難計画が書面上充実したとしても、いざ事故になれば、整然とした避難など不可能であり、PAZ、UPZ圏内外に留まらない西日本全域に甚大な被害をもたらすことは、福島原発事故が実証している。
PAZ=原子力施設から半径5キロを目安に「予防的防護措置を準備する区域」。UPZ=原子力施設から30キロを目安に「緊急時防護措置を準備する区域」。
▶福島原発事故の悲惨、収束を見ない事故対応の困難、この経験を直視すべき。そもそも地方創生・地域活性化と原発再稼働は、相容れない!
地方創生2法が成立し、全国の自治体で地域活性化が図られようとしている。法の是非はさておき、地方創生と原発の再稼働が相容れないこと、真逆の関係にあることは、健全な思考回路を持つ政治家であれば指摘されるまでもないだろう。3.11福島原発事故の悲惨、いまだ収束を見ない事故対応の困難、故郷に戻れない10万余の原発被災者・・・この経験を直視すれば、なんら根拠を有しない「火力発電や再生可能エネルギーは、原発に比べ、コストや安定供給の面で劣る(だから原発)」などという無責任極まる発言は、撤回されるべきではないか。
――東京・生活者ネットワークは、次なる原発震災、封じ込め機能喪失・炉心崩壊事故を未然に防ぐために、10万年、百万年にわたり安全に貯蔵し続けなければならないような核分裂生成物をこれ以上つくらせないために、原子力発電はもうやめなくてはならないと考える。めざすべきは「原発ゼロ」社会の実現、取り組むべきは「原発廃炉」に向けた技術力の向上ではないのか。それでもなお、国策原子力が生み出し続けてきた「使用済み核燃料」「40数トンにも及ぶプルトニウム」「高レベル放射性廃棄物」という負の遺産を抱えていることを忘れてはならないし、発生世代である私たちが立ち向かうべきは、これら負の遺産の安全な封じ込めであり、そのために知恵を集めなければならないのではないか。