九州電力川内原子力原発所の再稼働は認めない旨、パブコメを提出しました
東京・生活者ネットワークは、《九州電力が川内原子力発電所再稼働に向けて提出した原子炉設置変更許可申請書に対する、原子力規制委員会の審査書案(審査結果)に対するパブリックコメント》について、以下の意見を提出しました。
原子力規制委員会 http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu140716.html
募集要項と審査書案 http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h26fy/data/0017_01.pdf
川内原子力発電所原子炉設置変更許可申請に関する審査書案へのパブリックコメント
2014年8月14日
東京・生活者ネットワーク
1.審査の位置づけ及び、規制庁における「新規制基準」と規制委員会の責務について
規制庁の責務は、世界に類を見ない東京電力福島第一原子力発電所同時多発事故を引き起こした事態を厳に反省し、再び同様の事故を起こさないための規制(=安全性の確保)をすることに、その役割と責務があると考える。ところが今回の審査書は、「九州電力川内原発の原子炉設置変更許可申請についての、『技術的な』部分における意見書」であり、これへのパブリックコメントの実施であるとしている。その上で規制委員会の田中委員長は、「(あくまで)規制基準の適合判断であり、安全性を保証(担保)するものではない」とも明言している。要は「規制基準に対する適合性をひと通り審査したので報告する」限りであるという。現状の規制基準では「安全性の担保はしない=できない」のであれば、そもそもこの審査は無効である。安全性を担保するために、さらなる追加規制が必要なのであれば、そうすべきであり、さらなる規制をしても原発の安全性など担保できないのであれば、再稼働はやめるべきである。仮に、規制委員会の本旨は別にあり、何らかの事情(政治介入、時間やコストなどの制限など)が内在するのだとしたら、この審査は無効であるばかりか、専門性と独立性をもってして審査にあたるはずの、規制委員会そのものの存在理由をさえ自ら否定した産物である、と言わざを得ない。
2.地震と津波に加え、火山の噴火に関連した懸念
重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を講じてきたはずの東京電力福島第一原子力発電所は、大地震と津波をきっかけにメルトダウン事故を起こし、3年半を経てなお事故収束には至らず、危険極まる被曝労働を強いている。そもそも予測不能・人知を超えた自然災害への対策は不可能なのであり、また、福島原発事故発生の原因と経過が判明しなければ、事故の発生を防ぐことも事故拡大を防ぐことも不可能である。このことの科学的・技術的解明がなされなければ、事故は再び繰り返されるだろう。8 月3 日に発生した口之永良部島(活火山ランクB)の噴火では前兆がほとんどないまま噴火が始まり、同時に火砕流が発生した。川内原発ではモニタリングで予兆をつかみ、事前に原子炉の停止、核燃料の搬出を行うなどとしているが、大規模のカルデラ噴火が前兆のないまま始まれば、短時間での核燃料の搬出など実行不能・絵空事であり、破局的事故が起ることは必至である。そもそも九州は火山と温泉だらけの島であり、鹿児島近辺だけでも5つ以上の巨大カルデラが存在する。日常的に噴火、またはその可能性があるとして国際火山学及び地球内部化学協会が指定する特定16火山の一つ、桜島は至近であり、雲仙普賢岳の火砕流の脅威も記憶に新しい。このような立地条件下で原発を動かしてきたこと、再び動かそうとすることが、そもそも非科学であり、誤った選択である。大規模火山噴火の発生頻度についての算定方法も、噴火時の対応方法についても、真っ当に検討が行われたとは思われない。噴火はもともとムラがあるものであるが、それを3つのカルデラの平均発生間隔を約9万年とする曖昧なデータに基づき、「数万年に一度しか起きないような自然災害への対応は不可能」とするのは、これもまた非科学であり、「原発の稼働期間中における巨大噴火の可能性は十分に低い」とする根拠とはなり得ない。多くの火山学者が「巨大噴火について、その時期と規模を予測することは困難である」と認めるように、火山影響評価ガイドが要求する「兆候把握時の適切な対処方針」を策定するなどは不可能なのである。なお火山地帯の原発立地は「欧米基準では立地不適!!」であり、日本政府の「新規制基準は世界最高水準」という触れ込み、それ自体が「真っ赤な嘘」ということになる。
3.発電用原子炉の使用の目的、使用済核燃料についての懸念
使用済核燃料については、「法に基づく指定を受けた国内再処理事業者において再処理を行うことを原則とすることとし、再処理されるまでの間、適切に貯蔵・管理するという方針であること、海外において再処理を行う場合は、我が国が原子力の平和利用に関する協力のための協定を締結している国の再処理事業者に委託、これによって得られるプルトニウムは国内に持ち帰る、再処理によって得られるプルトニウムを海外に移転しようとするときは、政府の承認を受けるという方針に変更はないことから、原子炉が平和利用以外に利用されるおそれがないものと認められる」などとしているが、すでに日本が保有するプルトニウムは、長崎原爆(プルトニウム239型原爆:ファットマン)4千数百発分に達しており、昨今の日本政府の、人間の安全保障を逸脱した防衛政策への変更を鑑みるに、原発再稼働、再処理によってさらに累積・貯蔵されるプルトニウムは日本政府により核兵器に転用される可能性は否定できない。
4.原発運用にあたっての経理的基礎に係る部分への疑念
「九州電力は、重大事故に対処するために必要な施設他の設置に伴う工事に要する資金については、資金を自己資金、社債及び借入金により調達する」とし、規制委員会はこれを了解するとしているが、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理は一企業である東京電力の資本だけではどこにも足りず、国による厖大な公的資金投入(すなわち国民の税金)に依っている。根拠の甚だ乏しい対策のための工事費用が調達可能であるなどをもって、よしとする、今回の規制委員会の判断は意味不明・常識の外である。ふたたび、国による公的資金投入を余儀なくされるような破局的事故が発生すれば、国の存立さえ危うくする事態にいたることは明明白白なのである。
5.パブコメのあり方について
今回のパブコメでは、募集にあたって、科学的、特に技術的な見地からとしてコメントを求めている。一見専門家でしかコメントできないかの誤解を招く表現であり、むしろ作為的でさえある。再びこのような募集方法をとることがあってはならない。
以上、審査書案への主たる意見を述べるとともに、九州電力川内原子力原発所の再稼働は断じて認めない旨、表明する。