地方分権を取り戻す――今こそ市民自治を拡げよう! 「全国市民政治ネットワーク 全国交流集会2014」を開催

今こそ市民自治を拡げよう!「全国市民政治ネットワーク 全国交流集会2014」を開催

参加と自治の市民政治を実現するために、東京からスタートした(1977年~)「ネットワーク運動」は、現在10の都道県に広がりを見せ、ローカルパーティとして各地で位置づいている。議員の交代制をルール化することで、特に女性の政治参加を促進。全国では約500人の議員・議員経験者を生み出してきたところだ。

71920日、千葉市文化センターで「全国市民政治ネットワーク交流集会2014」が開催された。2年に一度開催される交流集会の、今年のテーマは「今こそ、市民自治を拡げよう」。19日は元我孫子市長の福嶋浩彦さん(中央学院大学教授)による基調講演と、議会改革をテーマとした5つのネット(市民ネットワーク北海道、ネットながの、ネット鎌倉、小平・生活者ネットワーク、越谷市民ネットワーク)からの活動報告、20日はテーマ別:5分科会(①組織を元気にする②調査活動③アベノミクスと女性政策④環境バスツアー⑤福祉バスツアー)に全体会と、実践交流が活発に行われた。 

地方分権を取り戻す――元我孫子市長 福嶋浩彦さん基調講演から 

 

福嶋浩彦さん(中央学院大学教授/元我孫子市長)の「地方分権をとり戻す」と題した基調講演。2014年7月19日

地方分権は「国から地方にお金を持ってくる」といったものではなく、自治体が責任を持って、自治を実現するためのもの。私たちの社会を真によくしたいと思ったら地域から、自治体から、一人ひとりの市民(国民)が「自分はどう生きたいのか、何をしたいのか、そのためにはどんな地域であればよいのか」から出発し、あらゆる人が対話し、合意して、社会をつくっていく=自治が大事。であれば、まちづくりに正解はない。

◆社会は地域から変える――問われる自治体の覚悟 

人口も増え、経済が拡大していく時代は、国の成長戦略にのった方が得だったかもしれない。しかし人口減少社会に生きる我々は「人口が減ることを活かして、どう社会の質を高めるか、どう社会をよくしていくか」を自分たちで考え、創意工夫して、決定して、実行していくことが必要で、自治が必要になるのはまさにこれからだ。

今、国からの「通達」はどのくらいあるかというと、実はゼロ。地方分権一括法で国からの通達はゼロになり、今来ているのは「通知」、技術的な助言で従う義務はない。介護保険法が2000年に施行された。その法律の条文をどう解釈するかは自治体の権限だが、果たして自治体はその権限を使っているだろうか。その前年の暮れあたりから要介護認定が始まった。我孫子市では、体は元気だが、昼夜逆転して、徘徊するなど認知症の介護の大変さを認識。だから国のソフトでは認知症高齢者の介護度が1と判定されていたが、我孫子市は介護認定審査会で指針をつくり、一定の要件で3が出たことにして、そこから二次の審査することにし、市民の利益のために国と戦った。結局、3年後厚生省(当時)がソフトを直した。そういう構えを自治体が持つことが大事なのだ。 

◆自治の土台は、直接民主制 

 

1日目の全体会で、「小平市の住民投票条例直接運動から議会改革を考える」をテーマに活動報告をする、小平・生活者ネットワーク市議会議員の日向美砂子

国民は総理大臣の選出を国会にゆだねるが、自治体の首長の選出は議会にではなく住民にゆだねている。住民は首長や議員をリコールできるし、議会を解散させることもできる。国民が法案をつくって国会に提出することはできないが、自治体の条例案を市民がつくって、首長を通して議会に提案できる(我孫子市では全国で唯一、市民が条文をつくって直接請求で成立した石けん利用推進条例を持っている)。自治体の合併に関し、議会が法定合併協議会の設置を否決しても、住民は一定の要件のもとで、住民投票で設置を決めることもできるのだ。

自治体は間接民主制のみの国とは異なり、直接民主制をベースにして、その上に間接民主制(二元代表制)を置いている。普段は首長と議会が市民の声を聴きながら決定するが、いざとなったらあるいは大事なことは、住民が直接決める、それが自治体の民主主義だ。重要政策について首長や議会の意思と住民の意思が異なると住民が感じたとき、住民が主権者としての意思を投票によって示し、首長や議会の意思を是正する大切な手段となる。あらかじめ住民投票の手続きを定め、いざというとき首長や議会が拒否できないようにしておくのが、常設型(実施必至型)の制度。2004年に制定した「我孫子市市民投票条例」では、投票資格者(18歳以上、永住外国人を含む)の8分の1の署名を持って請求があった場合は、市長は必ず住民投票を実施しなければならないとした。

間接民主制の過程でも、当然市民参加を拡げることを認識すべきだ。我孫子市市長時代に予算編成過程を公開した。新規事業について各部課からの提案、企画調整室が2回、市長による2回の査定のすべてを公表し、その都度パブリックコメントを募集した。透明性の確保とともに、市民が自分の要求から出発して、自分の要求と他の市民の要求のどちらがよいか比べ、まちづくり全体を考えていくツールとすることができる。 

◆議会基本条例で何が変わる? 問われる議員間討議と住民参加 

議会は行政の監視機関という人がいるが、議会は自治体の意思決定機関だ。条例、予算、重要な契約など、すべて議会で議決する。そのうえで、首長(行政)が議会の決定に基づき仕事をしているか、意思決定機関として行政を監視するのだ。

議会の最大の役割は「住民の合意をつくり出す」ことである。首長は一人しかいない。だから自分の支持者の立場や利益で動くことは、一瞬でも、あってはならない。常に住民全体の利益がどこにあり、合意をどうつくるか考え行動しなければならない。一方議員は何十人かいる。まず自分の支持者の立場や利益を主張するところからはじめてよい。ただし、合議制の意思決定機関として、議員同士が徹底して議論しないと意思決定できない。これからの人口減少社会において地域の質を高めていくには、何を実施し(何に集中し)、何をやめるかの判断が求められる。議員同士の議論で、その合意をつくらなければならない。全国で初めて議会基本条例をつくった栗山町議会基本条例は、議会は「議員による討論の広場」であり「議長は、町長等に対する本会議等への出席要請を最小限にとどめ、議員同士の討議を中心に運営しなければならない」と定めている(第9条)。まさにこれが、今自治体議会に求められるもっとも基本的な運営だ。

栗山町議会基本条例は議会を「議員、町長、町民等の交流と自由な討論の広場」と規定(第23項)。議員間の討議の場へ住民が参加する「一般会議」というものがある。議場に市民と議員が座って議論し、場合によっては市長以下執行部が傍聴席でそれを聞くこともある。

 

2日目の第2分科会で報告する、練馬・生活者ネットワーク区議会議員の栁井克子。7月20日

請願・陳情した市民が紹介議員に任せるのではなく、自分で正式に参考人として委員会に出席して、趣旨を説明し、議員からの質問に答えて議論する。それが議事録にも載る。これが議会への住民参加の第一歩だといえる。地方自治法に定められた参考人の制度を使えば、議会の正規の委員会の中で請願・陳情の発言を保障することができる。栗山町の議会基本条例では「議会は、請願および陳情を町民による政策提案として位置けるとともに、その審議においては、これら提案者の意見を聞く機会を設けなければならない」(第44項)としている。ポイントは、住民の権利として参加を定め、議会に義務けたことだ。

さらに栗山町では「議会は議員同士の議論を中心に議会を運営しなければいけない。議長は執行部を呼ぶのは最小限に、必要なときに呼ぶ」としている。当たり前ともいえるが、日本の自治体議会の現状を見れば、大事なことを議会基本条例で定めているといえるし、そういう議会になることが求められる。

 

 

2日目第3分科会の講師、ジャーナリストで和光大学教授の竹信三恵子さん(右から4人目)を囲む、東京・生活者ネットワークの参加者。左から、杉並区議の市橋綾子、杉並区議の曽根文子、小平市議の日向美砂子、東大和市議の実川圭子、板橋区議の五十嵐泰子、練馬区議の橋本恵子、日野市議の吉岡奈津惠、練馬区議の栁井克子

最後に今、市民の力が問われているということを言いたい。住民投票も市民が対話して、とことん議論して、最後は多数決で決めようと合意して住民投票を実施するのであれば民主主義は深まる。但し対立する意見をもつ者同士が対話するどころか、顔を見るのもいや、だから多数決で決めようというのでは、住民投票は単に政治的な手段に過ぎないことになる。「市民自治は市民一人ひとりから出発すべき」と言われるが、これでは理想の姿をどこかから持ってきているだけ。そうではなく「国家から出発するような社会ではなく、私は生活者である、市民一人ひとりから出発してみんなで話し合ってつくっていく社会に生きたい、私はそっちの社会をつくりたい」という、自分から出発しないと市民から出発することはできない。そこも外さないようにしたい。

東京・生活者ネットワークは、今回の全国交流集会を糧に、参加と自治の地域づくりに新たな歩を踏み出すことになる。

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