子どもの権利条約批准20年・国連採択25年 記念シンポジウム開催される
子どもの権利条約批准20年・国連採択25年 記念シンポジウム開催される~第13回子どもの権利条例東京市民フォーラムのつどいから
東京・生活者ネットワークも呼びかけ団体として参加する、子どもの権利条例東京市民フォーラムのつどい(以下:条例フォーラム)が3月30日、東洋大学125記念ホールを会場に開催されました(主催:子どもの権利条例東京市民フォーラム/協力:東洋大学人間科学総合研究所)。
今年は日本政府が「国連・子どもの権利条約」を批准して丸20年、国連採択25周年となる節目の年ですが、子どもを取り巻く環境は好転したと言えるでしょうか。
子どもの権利条約 国内批准20年を振り返る―学校への条約実施を急げ!―
喜多明人早稲田大学教授/子どもの権利条例東京市民フォーラム代表による、「子どもの権利条約 国内批准20年を振り返る」と題した基調報告では、全国で100近い自治体が「子ども(の権利)条例」を制定し、福祉的支援や多様な学び保障の取り組みが活発化するなど、主に地域に根差した自治体職員や、私たち条例フォーラムを含む多様で多数のNGO/NPOによる条約の普及・実施に努力がはかられたことが確認されました。しかし、一方で不登校、いじめや体罰、虐待が横行するなど子どもの権利はその理念から逆行する状況もまた生み出しています。喜多明人さんは、この現状を踏まえ――しかし、残念だが学校現場での条約の実施には疑問符が付く。学校の条約実施を急げ!――と発信。
――学校は非常に閉鎖的で、自治体や市民との関わりをなかなか持ち得ないできた。その結果、子どもたちの権利侵害状況は切迫し、先生たちは疲れきっている。だからこそ、学校に子どもの権利条約の入る余地がある。学校が抱えている大きな問題、いじめの問題を解決していく視点がある。20年前から学校が条約を取り入れていれば事情は違ったと思うのだが、ところが昨年6月「いじめ対策推進法」が成立。この問題に国が直接関与するような事態になってしまった。そして、差し迫った問題として都のいじめ対策がある。問題は東京都教育委員会指導部が公表した「生活指導統一基準」(昨年6月)にある。いじめ対策として「法令に基づいた懲戒の発出と改善の指導を行うための指針」が示されており、「威圧行動」「いじめ」などの行為には、「停学」「退学」をもって基準とするとしているからだ。翻って国の対策法は、主に中学生を対象にしており「出席停止」の枠の中で話されてきたのだが、東京都の場合、すでに法の議論をも跳び超えてしまっている。しかも、「覚せい剤」「シンナー」など薬物使用と「いじめ」を同列視している。こうした乱暴な判断・規定が何をもたらすか。「学校の警察化」である。いじめを犯罪視して取り締まることでいじめはなくなるはずだという「学校厳罰主義」が根底にある都教委の現実に照らせば、来る「東京都いじめ防止条例」(6月上程)に危機感を抱かざるを得ない。子どもの権利条例と真逆の条例となる可能性が大きい、こうした厳罰化の流れを少しでもなくしていくことが、私たち条例フォーラムや市民社会が果たすべき重要な役割ではないか――と言及しました。
この事態に研究者らで作成したのが「学校いじめ防止対策基本方針作成のための14のチェックポイント」(国民教育文化総合研究所)[注]です。実は今回の対策法には子どもの権利条約の方針が小なり入ってきた、法制段階における研究者・弁護士らの努力が大きく、少なからない条約の趣旨を対策法や国の基本方針に組み込む努力をしてくれていることを糧に、問題多々の国の基本方針ではあるが、これをむしろ道具としながら、しかし鵜呑みにするのでなく、学校の取り組みを権利基盤型へと転換していく。そのためにいじめ問題の全体像・論点・問題点を14のチェックポイントで示した緊急提言を行ったということです。
この4月から各学校がつくるいじめ防止対策基本方針にチェックポイントが活かされ、開かれた学校のもと、子ども・市民参加でいじめ防止にむかうことができるよう、私たちも地域から働きかけ、また、来る東京教育庁が進める「東京都いじめ防止条例(案)」においても、都教委・都議会の動きを注視・監視し、また広く市民社会にむけて、「都が実施し市民意見を求めるパブリックコメントへの参加」などを働きかけていきたいと思います。
注:学校におけるいじめの防止等のための基本方針作成時に欠かせないチェックポイントを、作成のしかた/基本理念/対策の具体化/重大事態への対応-いじめ対策を支える法制度・条件整備、の5項14ポイントにまとめ活用を求めている。
東京都・自治体の子どもの権利施策は、どこまで進んだか―子どもが主体 教育・福祉の連携で子ども支援を豊かに―
さて、13回目となる今回の条例フォーラムでは、条約20年とともに、自治体に課せられている「次世代育成支援計画」10年目の締めくくりの年でもあることから、東京都や自治体における子どもの権利施策の進捗を独自調査(調査対象:東京都ほか23基礎自治体/調査協力:東京・生活者ネットワーク)。東京・生活者ネットワークから都議会議員の小松久子、代表委員の池座俊子が登壇。東京の子ども施策10年を振り返り、教育、保育、福祉・貧困、保健・食、放課後、居場所、遊び、子ども参加、権利擁護・救済、条例、子育て支援などを調査項目に報告、参加者と共に現状を共有しました。
*東京都・自治体の子どもの権利施策調査:結果は⇒こちら
続いて記念シンポジウムへと進め、教育分野から喜多明人早稲田大学教授、福祉分野から森田明美東洋大学教授、法分野に荒牧重人山梨学院大学教授が登壇、専門家の目でこの10年を捉え直す論点整理が試みられました。基調講演・自治体の子どもの権利施策調査を受けて進められたシンポジウムでは、自己肯定感の欠落、いじめ問題の深刻化など子どものたいせつな受け皿・居場所でもある教育・学校が問われている現状に焦点を当て、「教育と福祉の連携策の可能性」「スクールソシャルワークなど福祉的支援で学校をどう支えていけるか」などを主たる切り口に議論を深め、子どもの権利施策推進の意義を問い直す機会となりました。
ピンチをチャンスに! 参加者らは、今回の条例フォーラムを起点に、Plan‐Do‐Check‐Actionがいかに重要かを再認識するとともに、子どもの権利条約の必要性を示し・普及し、子どもの育ち支援の充実にむけるべく決意を新たにしました。