子宮頸がんワクチン 予防接種を受けた杉並区の少女に重い副反応―問題多い定期接種化

「予防できる唯一のがん」としてワクチン接種の法定化が予定される子宮頸がん。3年前より全国に先駆けて無料接種を始め問題事例はないとされていた杉並区で、重い副反応に苦しむ女子中学生がいた。一昨年の小松久子(東京・生活者ネットワーク政策委員/杉並区議)の質問に続き、杉並・生活者ネットワーク区議の曽根文子が議会でこの事実を追求。ようやく、区は独自の救済策を発表した。だが死亡例もあるワクチン接種は、副反応以外にも多くの問題を抱えている。

東京・生活者ネットワーク政策委員、杉並・生活者ネットワーク区議会議員の小松久子(手前)と、同区議の曽根文子。杉並区議会「ネット・みどり」控室で

 区の答弁で繰り返された「問題なし」?!

 発端は2月初旬、杉並・生活者ネットワーク事務所にかかってきた1本の電話だった。区内に住むその女性は、自分の娘が子宮頸がんワクチン「サーバリックス」接種による副反応に苦しんでいる、昨年6月議会の曽根区議の一般質問への答弁が「事実と違う」と訴えた。「副作用の報告はあったのか」という質問に対する区の答弁は「重篤な事例報告は受けていない」というもの。ところが、2011年11月当時、中1だった娘さんは2回目の接種直後から腕のしびれに襲われ、痛みは全身にひろがった。歩行困難で車イス使用を余儀なくされ、一時期は自分の名前も言えないほど重い症状となり、1年3カ月も学校に行けなくなってしまっていた。

このワクチン接種については、昨年から今年に至る曽根質問の以前に、小松久子区議が杉並区議会で副作用に関する質問をしている。杉並区が国の助成開始前に自前で「中学入学お祝いワクチン」と呼称して無料接種を導入した後の、11年12月議会に、国の方針を受けて杉並区が対象者を広げるための補正予算が諮られたときのことだ。総務財政委員会で「事故を含め、問題などは起きていないか」と質した小松質問に対し、「一部腕のはれとか痛みなどの事例は報告を受けているが、大きな問題ではない」と、区は答えている。だがこのときすでに娘さんは接種後の重篤な副反応で通学ができない状況にあった。

東京・生活者ネットワーク政策委員、杉並区議の小松久子(左)と杉並・生活者ネットワーク区議の曽根文子。杉並区役所の前で

この3月7日。杉並区議会予算委員会で曽根がこの問題を明らかにした翌8日。各新聞社などからの取材が区に殺到すると一転、区は、任意接種への対応としては異例の、「救済制度の設置」を表明した。続く13日には、「一昨年、昨年の答弁は虚偽であった」と認めた。

安全性・予防効果:いずれも確証がないままに導入された「サーバリックス」

 事実を隠した議会答弁は論外だが、最も問題とすべきは安全性だ。一般的にどんな予防接種も副反応は不可避とされるが、子宮頚がんワクチン「サーバリックス」は、他と比べて発生率が非常に高く、インフルエンザの約10倍。すでに全国で956件の事例が報告されているばかりか、死亡例もある。

しかもこの薬剤は、臨床試験の終了を待たずに国が導入を決めた経緯があり、治験が不十分であった疑義が拭えない。がん予防効果についても、「期待されるものの、実際に達成されたという証拠は未だなく…」と厚生労働省関係機関が報告書で述べている。つまり、安全性、予防効果のいずれも確証がないままに、政治的に導入された薬剤といわざるを得ない状況にあるのだ。

 法定化:定期接種化より、性教育の充実が先だ

 法定化すれば莫大な公費が投入され、自治体は接種を勧奨する義務を負う。ターゲットは十代の少女たちだ。正しい情報提供が不可欠であることは言うまでもないが、子宮頸がんが性感染症であればなおさら、「男女を問わず思春期における性教育の充実」こそが最優先されるべきである。

そもそも、性教育とは、ライフサイクルに応じた性的発達と変化に対応して、生理・心理・社会などの各側面から健康的で豊かな人間性と社会性をもった性意識を身につけることができるよう学びを提供し、導くことにある。また、情報化社会における今日の性教育では、性行動・性意識・性感染症をはじめとする予防介入の問題がますます重要となることを付記したい。

 注:子宮頸がんは進行が遅く、2年毎の検診で早期発見すれば簡単な手術で完治し、出産もできると言われている

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