震災から1年半 被災地の子どもたちが疲弊している! 報告1
第5回東日本大震災子ども支援ネットワーク意見交換会から
第5回東日本大震災子ども支援意見交換会は9月13日、衆議院第2議員会館多目的室で開催された。主催の東日本大震災子ども支援ネットワークは日本ユニセフ協会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、チャイルドライン支援センター、子どもの権利条約総合研究所のよびかけにより2011年5月5日に設立(事務局:東洋大学 森田明美研究室)。東京・生活者ネットワークも「子どもの権利条例東京市民フォーラム」のメンバーとして活動に賛同団体として参加している。
大震災直後から被災地では子どもたちの学習時間の遅れを取り戻すために、学校や地域の様々な場所で「学習支援」が行われ、NPO/NGO あるいは市民や団体が多様な形で子ども支援を行っている。しかし、大震災から1年半が経過してなお、仮設住まいの子どもたちの生活環境はほとんど変化がなく、むしろ、深い悩みを抱える子どもや若者たちも地域に増えている。今回は、子どもの学びの権利を保障する「学習支援」を中心とした取り組みについて報告、意見交換が行われた。
<strong>【被災自治体における子どもの状況と学習支援への取り組み】</strong>
●村上善司さん(宮城県女川町教育委員会 教育長)
女川町は人口が10,000人から8000人となった。学校は高台にある小学校、中学校各1校に集約された。震災前473人の小学生は9月1日には319人、そのうち159人が仮設住宅で暮らしている。中学生は257人から218人になり、そのうち102人が仮設住宅で暮らす。女川町はその地形柄、空地が確保できず仮設住宅は、隣接する石巻市にある。仮設暮らしを余儀なくされている子どもたちを通学バス10台で送迎。4畳半2間の仮設では家庭学習する時間も場所も確保できず、競技場、運動場などに仮設住宅が建てられたため遊び場もない。夢中で過ぎた1年半、今児童生徒の体力が低下し、心のケアを必要とする子どもたちが大勢いる。
NPO法人カタリバが協力し、地域みんなでつくり上げる放課後の学校としてコラボ・スクール「女川向学館」が昨年7月女川小学校校舎1階に開校。5教室と自習室がある。16時から21時半、小中高校生を対象に、地元の塾講師による家庭学習の支援や、多彩なボランティアによる英会話や理科工作教室などを開催、見守ってくれるお兄さん、お姉さんがいる安心できる居場所となっている。授業料は2011年は無料だったが、12年度から一部自己負担(月額3,000円~5,000円)となった。参加者は小中高生の半数で、参加していない子どもたちが今もっとも気がかりと話された。
学校教育関係の要望としては、児童生徒の心のケアのための教育復興支援等加配教員の継続配置、スクールソーシャルワーカーの常勤化、学級編成の弾力化、学校施設の充実にかかる補助の継続などがだされた。保護者が元気でいることが、子どもたちの元気にもつながるので、大人たちの仕事の確保や心のケアも必要であることも強調された。
●白岩健介さん(岩手県釜石市教育委員会社会教育主事)/亀山明生さん(公益社団法人青年海外協力協会調整員)
釜石市でも住宅事情や公共施設・フリースペースが被災したり避難所、支援の拠点となっていることから家庭学習の環境が整っていない。文部科学省「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」の活用で、中高生のための学習支援事業「釜石S☆Cram School」を立ち上げた。釜石市教育センターで毎週月・水・金の16時~21時、土・日・祝日の12時~21時、2名の指導員が自学自習を支援し、利用者の帰宅支援として方面別にタクシーが配車されている。「静かに集中して勉強できる」「わからないことを教えてもらえるので助かる」「帰宅もタクシーで送ってもらえるので安心」などの感想がある。来るときのバス代200円が負担となっていることや、利用者が学習意欲の高い生徒に偏重していることから、学力の底上げや地区ごと開催のニーズへの対応、補助金の柔軟かつ現実的な制度設計などの課題が明らかになっている。