国連・子どもの権利条約と日本 第3回院内セミナー開催される
子どもの権利基本法の法制化、子ども省の新設などを提言
2010年5月27、28日、第3回となる国連・子どもの権利条約日本審査が、ジュネーブ国連子どもの権利委員会で行われた。審査後に出された総括所見を、今後の日本での子どもの権利条約の実現に生かすための第3回院内セミナー(進行:森田明美子どもの権利条約総合研究所副代表、東洋大学教授)が、7月29日新参議院議員会館を会場に、国会議員とNGO・市民との共同で開催された。
これまでのセミナーでは、第1回は「国連子どもの権利委員会での事前審査における課題」を、第2回は「日本審査と総括所見」を手掛かりに協議。第3回を迎える今回のセミナーでは、NGOレポート作成に参加した約10団体*からの報告と所見の分析に加え、審査に参加した外務省を始めとする政府代表団メンバーにも参加を要請。
委員会での議論と総括所見は、日本における子どもの権利条約の実施のために、今後の取り組みを考える際に大変貴重なものである(前政権が提出した報告書では子どもの権利委員会からの第1回、第2回勧告に誠実に応答していないばかりか、「権利基盤アプローチ」が一顧だにされていない。また、差別の禁止、子どもの貧困・不登校・高校中退・いじめ・自殺・体罰・虐待・少年司法などの領域で重要なデータが欠落しており、子どもたちの実態が明らかにされていない。日本の子どもの14%余りがいわゆる貧困状態にあることを是正するために、予算を適切に配分することなどが盛り込まれている)。
市民・NGO側は、「日本政府は勧告を受けて、子どもの権利を守る基本法の制定とともに、教育や福祉など多くの分野を横断的に掌握し子どもの問題に取り組む『子ども省』の設置を急ぐべき」と提言。小宮山洋子衆議院議員、大河原雅子参議院議員らは、「子どもの問題を掌握する『子ども家庭省』を民主党として公約してきたところであり、これを視野に検討を進めたい」と呼応。外務省の担当者は「『子どもの権利基本法』など新たな法律の制定は、とても大きな山で一気に登ることは困難だが、勧告が出された背景を理解し、NGOの意見も取り入れながら取り組みたい」と応じた。
子どもの問題は待ったなし。主催者側を代表して、荒牧重人(子どもの権利条約総合研究所事務局長、山梨学院大学教授)は、「国際的水準から見た日本における子どもの権利の実現のため、課題と今後の取り組みを考えるための建設的対話の場として、このセミナーを継続開催したい」とした。
*東京・生活者ネットワークは、子どもの権利条例東京市民フォーラム実行委員会団体として、NGOレポート作成に参加