「子ども手当」を生かし、育てる
1993年から05年までの私が都議時代は、生活者ネットワークが子どもの権利条例制定運動に取り組んだ時期だった。子どもの権利保障を求め「子どもの意見表明権を」「オンブズパーソン制度を」「子ども施策にもっと予算を」と都に言い続けた。
議員を辞めたのち多重債務者の生活再生支援事業を立ち上げ、都の多重債務者支援事業を受託。有限責任中間法人生活サポート基金主任相談員として活動している。経済的苦境にある人たちに日々接するなかで、親の貧困が子どもの可能性の芽を摘み取り、貧困の連鎖を生むという事実を見て、あらためて「子どもの権利」の意味を再確認し、ようやく実現に向かおうとしている「子ども手当」制度化を評価している。
すでに勤め人の定期昇給が当たり前の時代は終わった。子どもの成長にかかる経済的負担を親だけが担う時代ではなくなったということだ。世間ではこの手当が貯金に回ってしまって経済効果は望めないという批判もあるが、「子ども手当」は子どものセーフィティネット構築の第一歩であり、単にばら撒きの対象としたり、経済効果一辺倒で論じること自体がそぐわない。一方で、実質手元にお金があるという安心感が健全な消費活動をうながすことにもつながる側面も持ちえているといえないか。なにより親の経済状況に関わらない、未来を生きる子ども一人一人がその権利の下に成長・発達できるよう社会がサポートするしくみであることに大きな意味があるのだから、この施策を確実に実施すべきである。
「子育て・介護は社会のしごと」を選挙政策に掲げ、一貫して子育ち・子育てを社会全体で担うことの必要性を訴えてきた者として、「子ども手当」はその実現につながる希望の一歩と評価したい。
杉並・生活者ネットワーク代表/元都議会議員 藤田愛子