国会内緊急集会 ゆがめられる地球温暖化対策基本法
密室の官僚主導でマニフェスト違反を許していいのか
2009年秋、政権交代によって民主党連立内閣が発足し、鳩山新首相は、国連総会演説において、2020年までに二酸化炭素(CO2)25%削減の中期目標を打ち出した。この発言を契機に新政府は、温暖化対策基本法を制定することを明らかにし、今国会への上程に向けてきた。ところがここに来て、法案は期待された方向とは大きくかけ離れたものといわざるを得ない内容であることが明らかとなり、この日の集会でも多くの問題点が指摘されることになった。
諸外国の目標の様子見で、それによってはおろそうかというのでは、目標とは名ばかり。京都議定書のまとめ役として、ポスト京都に向けても、新政権は、国内排出量取引制度の創設、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入など、あらゆる政策を総動員して低炭素社会の実現をめざしていくはずではなかったか。目標とともに時期も明示して掲げること、国内排出量取引制度は、発電所や大規模工場など大口排出源に排出上限枠(キャップ)を設定し、原単位ではなく総量での規制とすること、再生可能エネルギーの野心的な目標と実現のためにすべての分野で固定価格買取り制度を創設すること、などを柱立てすべきではないか。
さらに、新法で大きく問題となるのが、CO2排出削減策だとして原子力発電を位置づけようとしていることだ。現在、電力各社は原子力を利用してキロワット時あたりのCO2排出量(原単位)を削減するとしているが、同時に販売電力量を積極的に増やそうとしており、これでは削減は見込めない。総量で削減が求められているときに原単位で減らすことでは対応できないし、原子力が基本法で位置づけられればこの流れが確定してしまい、削減目標を達成する道は閉ざされることになる。原子力に依存した目先の二酸化炭素削減策は、省エネや自然エネルギーへのシフト策を立ち枯れさせてしまうことは必至であり、そればかりか、長期的視野に立てば原子力こそ最大のCO2排出源となる。なにより、その処分方法も無害化の技術ももたないまま核のごみを生み出し続ける、世界に究極の環境破壊をもたらす原発に依存した温暖化対策など本末転倒なのである。
大きく問題点、矛盾点を抱え変容しつつある温暖化対策基本法。東京・生活者ネットワークは脱原発を掲げると同時に、MAKE the RULEキャンペーン(気候保護法制定運動)に賛同し、自治体議会から国に法整備を求める意見書提出を実現してきた。来週中にも閣議決定がせまっている今、新政権は、もう一度原点に立ち戻り、新法の立法過程を密室に閉じ込めず、ルールづくりを求めてきた市民に開くべきだ。新政権の寄って立つ基盤が市民にあることを示すべきだ。