自治の介護保険事業計画は実現するか

高齢者の地域ケア構想を制度を超えて描きだす—そのことが問われている

 2020年、 東京都は4人に一人が65歳以上という時代を迎える。 特に一人暮らしや、 高齢者のみ世帯が多い東京では、 介護が必要になったら個人で対応できるものではない。 2000年にスタートした介護保険制度は「介護の社会化」を謳ったが、 本当に私たちはこれで安心した高齢期を過ごせるのだろうか。

 その介護保険制度は、 2006年に大幅な制度改正が行われた。 財政面の安定化を図る目的で、 比較的軽度な要介護・要支援者へのサービスは 「新予防給付」 となり、 新たに、 介護状態になる前からの継続的な支援をめざす「介護予防」 や 「地域支援事業」が組み入れられ、ますます制度は複雑になってしまった。
 「新予防給付」は自立を促すことが強調されたが、 自立の効果を計ることは難しく、 実質サービスの抑制になっているのではないか。 これに関しては東京・生活者ネットワークも参加して実施した、 3年間にわたる軽度者の実態調査結果がまとめられている最中であるが、 必ずしも高齢者の生活実態に添うものではなく、 かえって生活の質を落としている場合も見受けられた。

 「地域支援事業」は、 要支援以前の高齢者を対象とした筋力トレーニングや口腔ケアなど 「介護予防」 と、 地域の総合相談、 要支援者のケアプラン作成などを 「地域包括支援センター」 が行うが、 その財源が介護保険事業費の3%以内と決められていることから、 どこに重点を置くかは、 自治体の判断だ。
 
 埼玉県所沢市では、「地域包括支援センター」 を今後予測される独居・認知症高齢者などの早期の掘り起こし拠点と位置づけ、 市内14カ所あるセンターからすべての事例報告が、 市の担当者に届くようなしくみにしている。 このような日常活動の積み重ねがあってこそ、 地域の高齢者実態に添った、 自治体の地域ケア体制ができるはずだ。「地域包括支援センター」 の設置状況は自治体によってさまざまだが、 このあり方が、 今後の自治体の福祉政策に大きく影響するに違いなく、 再検討する時期ではないか。

 現在、 各自治体からは第4期(09年度から3カ年)の介護保険事業計画案が出されつつあるが、 私たちの耳に届くのは保険料の最終額ばかりだ。 多くの自治体がこの期間中に高齢化率20〜25%になるが、 その実態に見合うサービス供給になっているのか、 市民の目で見極めていくことが必要だ。 介護保険は自治するものであることを、 忘れてはならない。

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