韓国からの訪問教授、金永来さん、東京・生活者ネットを研究訪問
「女性と市民政治」を主なテーマに
政治学者で、現在は慶應義塾大学訪問研究教授である金さんは、NGOやNPO研究が専門の政治学者(韓国政治学会会長を経て、現在は韓国NGO学会会長、亜州大学政治学教授)。金教授は、市民と政府がどのように連携したら豊かな市民社会がつくれるかを研究テーマにおく立場で、「日本の、女性による市民活動や政治参加の実際、とくにローカルパーティ・生活者ネットワークの女性議員に直接にインタビューしたい」と、この日の交流がもたれたものです。懇談で金教授は、自国の女性、学生、市民による活動の実際や果たしてきた社会的役割について、次のように語りました。
●女性の政治参画の拡大なくして、市民社会への展望は開けない。韓国では昨年の国政選挙を前に女性の団体が活動し、選挙法を変えるという快挙。事実選挙後の女性議員が占める割合が、5.9%から13%へと倍増。
●ノムヒョン政権の下、政治の場や立法の場への市民、団体の力が大きく作用している。教育大臣に任命されようとしていた候補の不正を女性団体が質し任命を否決させる、経済大臣が更迭されるなど、女性が市民力を発揮している。1990年以来、活発化している落選運動(不正がある人、専門性のない人を名指した)の経験が、市民自らが市民力を確信することに。03年のノムヒョン大統領を生み出すことにも繋がった。
●インターネットを通じた若者の政治力が社会を変えようとしている。韓国では、有権者が候補者の政策を聞くのが、当たり前で、政治アレルギーはほとんどない。同時に、女性の社会参加が広がっている。公務員・司法試験とも合格者の4割は女性。大統領広報担当官の7人のうち4人が女性で、トップを担っているのも女性。授業料の値上げ問題や教科のこと、大学総長を選ぶ際などには大きく意思表示、ストを打ったり、意見表明をしたりと、学生の政治活動、自治活動は活発である。
●韓国では女性の活動団体を支援するために、市民自らがサポートする事例が多くなっている。東京では石原都知事のもとで都政運営に女性の参画が薄く、保守的なようにみられる。都議会で議員質問の答弁に立つ行政側(理事者)にも女性はゼロと聞く。127分の20議席しか女性議員がいない都議会において、生活者ネットの女性都議6人が存在する意味は大きい。ここを突破口にしてほしい…と、エールをいただくことに!
東京・生活者ネットワークは、これまでも韓国のさまざま市民団体の訪問を受け、昨年末にはKBSTV(韓国教育テレビジョン)の取材クルーの訪問を受け「女性の政治参加と実践」について発言するなど、市民交流を深めてきました。ここ数年は、準備年を含めて、韓国、日本の両国市民が共同し、ともに市民社会の構築をめざそうと「日韓市民社会フォーラム」に実行委員会団体として参画。両国での連続開催(ソウル、東京で年1回開催)が実現するなど、ともに活動を積んできました。さらに、21世紀を共に歩むパートナーとして市民レベルの日韓関係の礎を築いていくことを目的に、さまざまな交流を展開していきます。
〈写真〉3月23日、東京都庁議会棟談話室で、金永来(キム・ヨンレ)さん(左)のインタビューを受ける、都議の山口文江(中央)と品川区議の井上八重子(右)。この日、通訳をされた慶応義塾大学大学院生 慶済姫(キョン・ジェヒ)さん