共生の視点がない、トップダウン都政から市民主権の都政へ
討論者:山口文江
生活者ネットワークは平成19年度一般会計予算、及び平成19年度臨海地域開発事業予算については反対、その他は賛成の立場から討論を行います。
石原都政2期8年を見たときに、1期目は確かにデイーゼル車規制や外形標準課税で国を揺さぶるなど、その政治手法は都政にスピード感を産み、新しい知事像を示しました。しかし、「三国人」や「ばばあ」発言など、近隣アジア諸国への何の配慮も見られない国際感覚や、女性蔑視の人権感覚が欠如した発言は、首都東京の知事として許されるものではありません。さらに、子どもを守り育てるべき教育行政において、国に先駆けて日の丸・君が代を強制し、教育現場の混乱を招いたのは、最も罪深いことです。
ここに来て、知事の肝いりで始まったワンダーサイトや新銀行などの、不透明な運営や経営不振が明らかになってきました。さらに知事四男への不明朗な公費支出など、側近重用・ファミリー都政の様相が強まり、権力者にありがちな末期的な症状を呈しています。
しかし、知事は、3選出馬のために、オリンピック招致を最大の公約として掲げ、それに向けて大急ぎで「10年後の東京〜東京が変わる〜」を策定しましたが、相変わらず東京だけは成長路線が続くと想定して、三環状などの道路整備や、都市開発を掲げています。世界都市を目指し、国際競争力に勝つことなどが盛り込まれた構想は、もはや時代遅れといわざるを得ません。
最も喫緊の課題は、都民の生命と安全を守る取り組みです。いつ発生しても不思議ではない東京直下型大地震に対して、住宅の耐震化は何より急務であり、個人の努力だけではなく、都としての財政的支援が不可欠です。オリンピック招致よりも、都民の生命の安全確保と環境保全を最優先すべきと考えます。
かげりが明らかな知事の人気回復のために、自治体や都議会にも何の説明もないまま、突然、都民税の軽減措置を発表するに至っては、選挙目当て以外の何ものでもありません。
景気回復のおかげで、都財政は危機を脱したものの、このままのトップダウンの手法では、新たな時代の市民主権に立ったまちづくりは望めないと判断します。
なお、臨海地域開発事業予算については、民事再生処理の検証もされないまま、持ち株会社の事業内容も明確にせず、積算根拠もない50億円の無利子貸付など、到底納得できないことから、反対します。
人口減少社会に突入した今、長期的な視点で、生活する都民の立場に立った都政運営こそが求められていることを申し上げて、生活者ネットワークの討論といたします。