日本批准20年! 国連「子どもの権利条約」を考える集い 開催される 子ども政策は、条約に照らして行われているでしょうか?
「子どもの権利条約」批准20年を考える集い 開催される
「子どもの権利条約」は、戦争の世紀を経て、世界中の子どもたちの権利を保障するために1989年11月20日、国連が採択した国際条約です。
条約採択から25年の今年は、1994年に日本が「子どもの権利条約」を批准して20年目の節目の年。これに合わせて、子どもの貧困の問題や子どもの育ち支援、震災被災地での子どもの現状などを考える集会が、子ども支援団体や学生・市民、研究者や自治体職員らの参加のもと、文京区の東洋大学白山キャンパスを会場に開催されました。主催:「子どもの権利条約批准20年を考える集い」実行委員会。共催:「子どもの人権連」(東京・生活者ネットワークも賛同団体として参加)、「東洋大学福祉社会開発研究センター」
知っていますか?「子どもの権利条約」
「子どもの権利条約」は、大きく分けて、子どもの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つの権利を守り保障することを定めています。条約批准国の政府は、中央政府・自治体政府とも、子どもの権利を守り保障するためにできる限りのことをしなければなりません。
子どもの権利は人権です。従ってそれは、責任や義務を果たしてから与えられるものではなく、生まれながらにして、すべての子どもにあるものです。政府やおとな社会には、子どもにとって最もよいこと=最善の利益は何かを判断し、子どもの権利をあたり前のものとして保障する義務や責任こそがあるのです。
被災地の、私のまちの子ども政策は、条約に照らして行われているでしょうか?
東洋大学白山キャンパスで開かれたこの日の集会では、西野博之さん(NPO法人フリースペースたまりば理事長)によるオープニング講演「居場所の力~川崎フリースペースたまりばの取り組みから~」を皮切りに、午後の特別講演、7つのテーマ別分科会へと続け、この20年間の日本での子どもの権利条約の実施状況や取り組み、評価と課題などについて意見が交わされました。
午後の特別講演に登壇した、国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんは、「金銭的な理由で必要な食料が買えなかったことがある」という人が、子どもがいる家庭の17%以上に上ること、ひとり親家庭においては、過去一年間に「住居費・電気・ガス・電話料金などが金銭的理由で払えなかった」割合が13~16%であること、それが日本の現況であることや、貧困層の子どもの半数近くが「夢を持てない」と考えていること、がんばらないから仕方ないという見方はまったくの間違いで、それが彼・彼女たちが乳幼児期を通じて生育環境を保障されてこなかったからであることなどを示す調査結果を紹介。そのうえで「この20年間で、日本の子どもの権利の保障が前進し、権利施策が向上したとは到底思えない」と指摘。「就学援助の充実など中高等教育の格差解消はもちろん、貧困の連鎖を防ぐためには、要支援家庭の生活水準の確保、幼児教育の無償化、質の向上」…等々が急がれることなどを示唆しました。
分科会では、東日本大震災被災地の子どもの支援課題も話し合われ、被災地で活動する市民活動団体、被災直後から、岩手県山田町ゾンタハウスで軽食付き自習室の支援をしてきたNPO法人こども福祉研究所(森田明美理事長)などから、震災から3年8カ月がたって広がる「支えられ格差」の現状が提起されました。福島県から参加した母子からは、「必要な支援を求めたくても、子どもたち自身が声をあげる場がない」「子どもの遊びや居場所支援、学習支援などが減っている」といった意見が出され、子どもたちが直面している問題の深刻さが浮かび上がりました。また、子どもとおとなが一緒に「子どもの権利」についてとことん語り合う場も設けられたほか、今年行われた国連「自由権規約委員会・人権差別撤廃委員会」による日本国審査の模様(朝鮮学校の学費無償化適用除外や部落差別にかかわる国連勧告)も報告され、今後日本で子どもの権利条約をどのように実施していくか、多岐にわたり話し合いが行われました。
この日の集会の実行委員長で、東洋大学福祉社会開発研究センターの森田明美教授は、「子どもたちが抱えている教育領域や福祉的困難を少しでも取り払い、適切な支援策を広げるために、子どもたちの声を聞き、意見を求め、おとなたちが一緒に考えていく、そういう取り組みを進めることが大切だ」と話していました。