若い力が明日の社会をつくる
樋口恵子さん講演 市民集会 at 杉並
■講演内容■
戦後60年に行われる都議選を前に、「女性の地位」を切り口に、変わったこと、変わらないことを検証したい。
人間らしい人間しかできないことは、歴史をもつということ。過去を踏まえ、国際的な視野で現状を認識し、未来を構築することが人類に課せられた責務である。では、この間、日本人は何をしてきたのか。
失われた10年といわれる90年代の日本だが、一方では各地で市民社会の成熟が進み、日本の政治や行政は大きく変化した。
変革の第1が育児休業法(92年)で、男女が同じ条件で採用される制度として国際的にも先進的であった。同法の成立がILO156号条約(95年)の批准を促した。
また、長寿社会の到来に暮らしの構造改革がついていかない中、介護保険制度(00年)が実施となった。国論を二分したが、参画条項が明示された同法こそ国民のニーズに支えられた政策であった。
さらに、97年改正男女雇用機会均等法、98年NPO法、99年情報公開法・男女共同参画社会基本法、00年地方分権一括法・消費者契約法・児童虐待防止法、02年DV法、03年次世代育成支援推進法などが成立、施行。法制を促したのは紛れもない女性・生活者、男性を含めたリベラルな市民であった。
変わらなかったものは何か。
ひとつは政治参加。世界経済フォーラムの調査では、日本の女性議員の数は、58か国中38番目(先進諸国では最下位)。市町村部では4割が女性ゼロ議会。都議会での女性議員の数は127分の20議席と15%、全国平均は7%という世界まれにみる国なのである。
さらに、男女の賃金格差が縮まらない。男性が育児に関わらない世界唯一の国で、M字型労働を強いられる女性の現状は変わらない。未だに介護は女性という実態も認識しなければならない。合計特殊出生率1.29がこのまま続けば、2050年には、全国民の4人に1人が女性の高齢者と推計される。子育てと仕事を両立できる社会システムを今つくらなければ、日本は高齢者の生活保護に追われる国に転落することは必至である。
生活者ネットが掲げる「市民力」——今まさに、私たち自身の創造力が試されている。世代を超えてともに語り、できたこと、積み残したことを次の世代に伝え、バトンを渡す。若い世代と中高年がともに未来に夢を描き、若者世代がしっかりトーチを掲げることを応援しよう!日本の市民社会は、すでに夢の実現を支える能力を備えているのだから。 (基調講演要約:編集部)