問われる教育行政の役割

子ども・保護者・教師を支え、教育環境を整えることこそが求められている

 石原都政による教育行政は、 都立高校・大学改革、中高一貫校新設など一見新しい発想で取り組んでいるかに見える。 しかし、 議論のないままのトップダウンの決定方法や改革内容には疑問を呈さざるを得ず、 これまでも、 教育基本法改定の動きに呼応するように歴史教科書の強行採択が行なわれ、 「日の丸・君が代」実施方針化、 性教育バッシング、 続く教職員の処分など強権的な教育現場への介入が相次いだ。

 06年4月、東京都教育委員会は、学校教育法施行規則の改定などを根拠に 「職員会議で教員の意向をはかる挙手・採決禁止」 を通知。 これに対し都立三鷹高校校長・土肥信雄さんは 「学校活性化につながらない」と、通知の撤回と公開討論を求めてきた。 しかし、 都教委は応じないまま昨年11月、「通知」によって教職員に言論の自由への影響があるかどうかを校長に面談で問う調査結果を発表。 約95%が「ない」と回答、「ある」はゼロだったとした。

 こうした都教委の動きに危機感を持つ保護者・市民らによって1.31市民集会が開催され、 集会では土肥校長をメインゲストに子ども・教育関係者らが多数登壇。 ▼子どものための学校とは▼校長のリーダシップとは▼教職員人事評価、教育委員会のあり方—などが話し合われた。 市民団体が独自に実施した「挙手・採決禁止に関わる教員アンケート」結果も発表され、回答者の83%が「通知は影響があった」と答え、 都教委調査と正反対の結果となったことが報告された。

 調査は都立高校の管理職を除く全教員を対象に実施したもので、 1月16日現在、 回答は121校1735人にのぼり、 その後も届いているという。 うち1537人が「発言が減った」、1354人が「発言しにくくなった」、1409人が「言論の自由に悪影響」、1286人が「通知は有害」 と答えている。 自由記述欄に半数以上がコメントを寄せ、「何を言っても無駄」「職員会議での発言に空しさを感じる」「同僚の教育観や本音がわからなくなり情報が流れなくなったため、 生徒指導上の連携ミスが増えた」「教壇が自由に発言できない環境にあって生徒に自由な発想・発言を求める教育ができるだろうか」 と多くの教員が悩んでいる。 一方で、 僅かだが 「労使対決に時間を強いられなくなったが校長の指導力不足を補填する目的であることが情けない」 という意見もあった。

 学校は、 公平に子どもの能力を引き出す場、 互いに信頼し、 自由な話し合いで問題を解決することを学ぶ場だ。 子どもたちが将来に明るい希望をもつためには、 子どもを真ん中に教職員、 保護者や地域の市民も自由に議論できる環境が必要であり、 そうした教育環境を整え支えることこそが教育行政の役割ではないか。 少なくとも都教委は、 「挙手・採決禁止通知」 に関する公開討論に応ずるべきだ。

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