東京都2023年度予算案発表にあたって(談話)
2023年度予算案発表にあたって(談話)
2023年1月27日
都議会生活者ネットワーク 岩永やす代
本日、2023年度予算案が発表されました。
一般会計の予算規模は、前年度に比べて3.1%増の8兆410億円、2年続けて過去最大になりました。企業収益の持ち直しにより、都税収入は前年度に比べて10.1%増で6兆2010億円を見込んでいます。
知事は、2023年度予算について、「明るい『未来の東京』の実現に向け、将来にわたって『成長』と『成熟』が両立した光輝く都市へと確実に進化し続ける予算」と位置づけ編成したとしています。東京ひとり勝ちと言われる潤沢な税収を背景に、神宮外苑をはじめとする大規模な再開発による貴重な緑の喪失や、オフィス需要の縮小にもかかわらず次々と超高層ビルが建てられ投機対象となるなど規制緩和が進み、市民生活を向上するための都市づくりとは思えない事態を危惧しています。
子どもをめぐる状況は、コロナ禍を経てさらに厳しさを増しています。保育現場での事故や不適切な保育、学校の教員不足による学級運営や授業への影響など、喫緊の課題の解決には、保育や教育の質を確保するために現場の保育士や教員の人材を確保しなければなりません。こども基本条例を活かし、子どもや若者が希望を持って生きる社会をつくることが必要です。
知事は、チルドレンファーストの新たな目玉施策として「018サポート」18歳までの子どもに月額5000円を支給する事業を突然発表しました。国に先駆けて実施する経済支援は、国制度への議論も呼び起こしています。実務を担うのは市区町村となるため、ていねいな対応が必要です。医療費助成やさまざまな給付金など事務負担が大きく、しっかりとした調整が求められます。
持続可能なまちをつくっていくことは、今を生きる世代に課せられた「未来への責任」です。気候危機対策で、都はCO2削減のため、環境確保条例改正による制度づくりと積極予算による事業実施をすすめています。住まいの断熱化は、省エネだけでなく住人の健康にも寄与することから、環境と福祉をセットで推進する視点に着目すべきです。光熱費削減と医療費削減につながる断熱化をマンションや都営住宅で導入することが必要です。
再生可能エネルギーは、円安にも国際情勢にも強い国産エネルギーです。エネルギーだけでなく、プラスチックをはじめとするごみ問題の解決や、人も生態系も蝕む有害化学物質の削減・廃止、人口減少と逆行する新たな開発や不要な公共事業を見直しメンテナンスへのシフトも必要です。資源循環の取り組みは企業も始めており、リユース、リペアを基調にしたサーキュラーエコノミーのしくみを早急につくらなければなりません。
4年目を迎えたコロナ禍への対応や待ったなしの気候危機、昨年始まったウクライナの戦争を発端に、世界中でエネルギーも食料も奪い合いが始まり、貧しい国の食料不足に拍車をかけ、分断と疑心暗鬼がますます平和を脅かします。日本でも安全保障の名のもとに軍備増強に血道をあげていますが、戦争への道に進まないための外交こそが重要です。
先日も、政権中枢にいる古い国会議員から少子化の原因を女性に押し付ける発言がありました。とりわけ政治分野でのジェンダーバイアスの根深さは、女性たちの反感を生むだけで全く解決にはつながりません。日本の政治家の意識は世界から取り残されていると言われてもしかたがありません。今問われているのは、子どもが生き生きと育つ社会、子育てを社会全体で支えるしくみをつくる本気度です。家族だけで孤立せず、地域で安心して暮らせる持続可能な社会にしていく施策が重要です。
都議会生活者ネットワークは、困難な時代を切り開き、高齢者や障がい者、外国人など多様な市民が暮らす東京で、信頼を基盤にした寛容な社会をめざし、だれもが安心して暮らせる持続可能な都市を実現するため、生活者の視点でチェックしていきます。