都心低空飛行!羽田新飛行ルート運用開始から1年――パイロットや管制官が明かす困難と負担増
都心低空飛行!羽田新飛行ルート運用開始から1年 国土交通省ヒアリングから
羽田都心飛行ルートは、昨年の3月29日から運用が始まって1年が経過した。4月9日衆議院第一議員会館において、国会議員有志による「羽田低空飛行見直しのための議員連盟(羽田議連)」が国土交通省を招致して、公開ヒアリング集会を開催した。前回(羽田議連発足時:2020年12月3日)とは趣旨を変えて、今回は市民団体から事前に国交省への質問項目も集めたうえで臨んだもので、生活者ネットのメンバーも多数参加している。国会議員による国交省ヒアリングとしては異例だが、参加申込制を採用し進行も市民団体が行った。
集会に先立って、出席国会議員の挨拶に続き、羽田新飛行ルートの白紙撤回を求める市民の署名が国土交通省に渡された。この日届けられた署名は1903筆で、総署名数8807筆となった。
国土交通省には、事前に「3月17日の第3回固定化回避検討会報告について」「新飛行ルート継続の根拠を示されたい」等々8項目の質問を提出していたが、国会議員が仲介してもなお、職員からは相も変わらず明確な回答はなかった。
また、この日参加した元JALパイロットで航空評論家の杉江弘(すぎえ・ひろし)さんから、固定化回避検討会が「技術的方策として挙げた12の飛行方式のメリットとデメリットを整理する」とされる飛行方式について、専門家の立場から問題を指摘し、国交省に回答を求めた。
例えば、有視界飛行方式や都心をショートカットする飛行について、➊有視界飛行が可能なのは年間何日あるか? ➋データがあるのか? ❸東京タワーと東京スカイツリーを避けて飛行することは不可能、これをどう考えるか—―等々、パイロットの立場から問題を指摘したが、やり取りはかみ合わず。杉江さんは「こんな飛行方式は検討する価値もない」と切り捨て、さらに強い口調で、「今日指摘した問題について誰一人反論しないということは、指摘は違わないと理解し、公表する」「どれだけ検討会を開いても時間稼ぎに過ぎず、現在の検討の仕方では税金の無駄遣いでしかない! このような検討会は即刻やめるべきだ」と、その非科学に怒りを露わにした。
パイロット・管制官が明かす困難と負担増――航空安全情報自発報告制度(VOICES)に寄せられた情報から
当日は国交省にも事前通達をしていなかったサプライズが!! それが公益財団法人航空輸送技術研究センターが、航空安全情報自発報告制度(VOICES)に寄せられた情報を分析したもので、同センターが国土交通省航空局に宛てた「提言書(2021年3月31日付)」だった。
※提言書はこちら
――『羽田空港の新飛行経路の運用(新運用)に関わり、風の状況に よっては、最終進入において操縦の困難度が高かったとの自発報告が多数寄せられている。』(一部抜粋)――
このように提言書は、改善すべき提言と、その提言に関する具体的投稿がまとめられた文書である。そして、羽田新飛行ルートがパイロットや管制官に恐るべき負担を与えている状況が、手に取るように読み取れる内容なのである。杉江さんは、この貴重な文書を根拠に問題を指摘したが、国は「パイロットとのコミュニケーションは十分に取れており、おおむね問題がないと聞いている」と鉄面皮の応答が…。そして、この時ばかりは、コロナ禍の中やむに已まれず会場を埋めた109名からは不満と怒り、非難を表すブーイングが沸き起こったことは言うまでもない。
東京・生活者ネットワークは、羽田新飛行ルート問題が表面化した6年前、いち早く羽田空港機能強化問題を考える「23区羽田問題プロジェクト」を立ち上げ、直下住民の意識調査活動のほか、200~300メートル上空を航空機が飛来する品川区では「新飛行ルートの賛否を問う区民投票条例」制定を求める直接請求(直接請求は僅差で否決)運動や、都県を越えて新ルート直下の住民と連携するなど、「世界の航空政策に逆行する危険な新飛行ルートは撤回へ」を掲げ活動を重ねてきた。回を重ねてきた国交省ヒアリングだが、今回はこれまでにも増して「甚大事故が起こる前に羽田新飛行ルートは白紙撤回へ」を肝に銘じた回となった。
何より、羽田新飛行ルート問題は、私たち東京都民が直面する「東京問題」なのである。