2020年都議会第3回定例会を終えて(談話)
2020年都議会第3回定例会を終えて(談話)
2020年10月8日
都議会生活者ネットワーク 山内 れい子
本日第3回定例会が閉会しました。
機動的議論のために通年議会を
今議会に提出された補正予算は、コロナ対策として9回目で、ほとんどがこれまでの事業を12月まで3か月延長するためのもの。制度融資の預託金に都債を発行し、さらなる需要に備えるため、昨年度剰余金を年度途中のこの時期に財政調整基金に積み立てるなど、財政運営が厳しくなってきています。税収落ち込みも予測されており、来年度の予算編成にあたっては10%マイナスシーリングするとのことです。こうした状況で補正予算に追加分23億円が提案されました。国のGoToトラベルに上乗せして都民が都内観光する際に1泊5000円助成するというものですが、制度設計がまだできておらず準備中と聞いています。10月1日からGoToトラベルの対象に東京も入りましたが、税金投入が観光業者ばかりであり、感染対策とのバランスなど、多くの批判が寄せられています。
また、新型コロナウイルス感染症対策条例改正案がようやく議案となりました。これまで補正予算や条例改正がたびたび専決処分されてきました。この条例は、4月の制定時も専決処分で、さらに7月臨時会閉会3日後に専決処分で改正されました。機動的に議論できるよう通年議会の必要性が増しています。議会改革の議論に加えるべきです。
デジタルファースト条例について
オンライン通則条例を改正する「デジタルファースト条例」が可決、来年4月から施行されることになりました。都民サービスの向上のためとしていますが、新型コロナウイルス感染症対策で行政のデジタル化の遅れが明らかになり、世界から取り残されないために一挙に進めようという焦りが見えます。対象となる行政手続等の範囲や、具体的なオンライン化に向けた施策は、今後策定される推進計画で具体的に示されます。オンライン環境にない人や障がい者に不公平、不利益にならないようにすることが重要です。
この条例改正は、条例名や第1条の目的に照らして、民間の企業活動も含めて、都が現在積極的に進めている5Gや官民連携データプラットフォームの動きへのステップとなっており、どうしても使う側の論理しか見えてきません。情報通信技術の進歩は、光と影の両面があり、最近はさまざまな弊害が指摘されています。国を超えて情報が飛び交う世界では、個人情報・データをだれがどのように使ったのかが本人にもわからないのです。EUでは個人データの保護を基本的人権とする「一般データ保護規則」を施行しました。本来個人データは本人のものであり、個人データ保護の理念をどこかで位置づける必要があります。新政権は、情報通信技術の利用を前のめりに進めていますが、理念なき技術となりかねないので、今回の条例改正を発端として個人データ保護の議論も進めるべきです。あわせて、セキュリティ問題や区市町村との連携および自治の尊重など、広く市民の意見を聞き、不安を払拭することを求めました。
東京2020大会の開催と成功に関する決議に反対
本日出された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催と成功に関する決議」に反対しました。
IOCのバッハ会長をはじめ組織委員会、新首相も、なんとしてでも開催すると意気込んでいますが、今の時点で開催を求めるのは、選手やボランティアの安全を無視した行為です。来年の大会が中止になれば、IOCには巨額の放映権料が入らなくなるなど、大変大きな打撃を受けることから、IOCは安全よりも経済を優先していると言わざるを得ません。
しかし、ほんとうに大会が開催できるのか、冷静に考えるべきです。ヨーロッパで再び感染が拡大しており、世界全体でも人の移動・交流によって感染が広がり、収束のめどがたつところまで至っていません。このような状態で世界のアスリートが東京に集まることができるのか、すべてのアスリートが開催を望んでいるのかも疑問です。
折しも昨日、大会の簡素化を検討していた組織委員会が、費用削減が300億円にとどまるとIOCに報告しました。延期に伴う追加費用は3000億円規模と目されており、さらにコロナ対策費が膨らむとの予測もされています。
「東日本大震災からの復興五輪」と言いますが、東京がいくら笛を吹いても、東北の被災地から聞こえるのは冷ややかな反応ばかりです。
ただただ開催をと拳を上げるのではなく、もっと冷静な判断を求めるものです。
新型コロナウイルス感染症の終息にはほど遠く、感染予防とともに生命と生活を守るため、セーフティネットの構築が不可欠です。
都議会生活者ネットワークは、持続可能な社会に向けて、生活者の視点で提案していきます。みなさまからのご意見をお待ちしております。