先住権なき「アイヌ新法」と、「アイヌ遺骨返還手続き」を問い直す~東京・白金で公開シンポジウム~

先住権なき「アイヌ新法」と、「アイヌ遺骨返還手続き」を問い直す

~東京・白金で公開シンポジウム~

 

6月15日、「先住権なき『アイヌ新法』と『アイヌ遺骨返還手続き』を問い直す」公開シンポジウムが、コタンの会/北大開示文書研究会の共催で緊急開催され、東京・生活者ネットワークも賛同団体として参加した(会場:明治学院大学白金キャンパス)。

 

さかのぼる4月19日、国会で「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」=「アイヌ新法」=が成立した。この法律で、じつに初めて「先住民族」という文言が登場。つまりこの国では、アイヌ民族が、和人に先立って北海道を中心とした島々に居住してきた「先住民族である」史実、明治政府により北海道開拓使が置かれてのち、土地を奪われ移住や集住を強制させられ、文化や習慣を奪われたアイヌこそが「先住民族である」と法的に認められるまでに150年もの、気の遠くなるような歳月を要したということだ。

しかしながら、一方で、もはや国際常識である「先住権」回復にはきわめて消極的で、アイヌたちが求め続けてきた格差解消にかかる生活支援や教育支援施策などは先送りに。2007年、国連が採択した「先住民族の権利に関する国連宣言」に日本政府は賛成を表明した、にもかかわらずだ。

 

「権利なき先住民族」――先住民族の声は届いたか

 

すなわち「アイヌ新法」には、「民族としての権利」(集団としての権利)が盛り込まれておらず、国際水準から依然として大きくかけ離れたものであるというのが、今回のシンポジウムの大きなメッセージなのである。

ヘイトスピーチへのカウンター行動と国会議員へのロビー活動により、差別の禁止が盛り込まれた成果は大きいが、「アイヌ施策推進地域計画」を自治体が作成し国が認定した場合に交付金が出るという仕方も問題だ。国民の理解・啓発のために、北海道白老町に民族共生象徴空間「ウポポイ」を建設予定だが、しかし、それもオリンピックを観に来日する観光客などを北海道に呼ぶための装置へと変質してしまうことが危惧される。

 

さらに、この場所に慰霊施設としてまとめて移管されようとしているのが、北海道大学はじめ、東京大学、京都大学、大阪大学などにより各地のアイヌコタンから、研究のためと称して盗掘され持ち去られた遺骨たち、1600体におよぶ遺骨たちだ。つまり、アイヌ本来の宗教的儀礼である死者の埋葬を行わないことで、人類学者による研究の余地を残す、そのための一括収容を目論んでいるということだ(注)。これを「元の場所に戻してほしい」という訴訟が起き、一部がようやくかつて眠っていた地に戻された。

浦幌アイヌ協会(北海道浦幌町)の面々がアイヌプリ(アイヌのやり方)で地元の土に戻しているのは、かつて研究者によって墓地から「研究発掘」され、長らく北海道大学に留め置かれていた同胞数十人の遺骨たち。奪われた遺骨へのアクセス権は国連宣言がうたう先住権の1項だが、同協会が北海道大学からそれを取り戻すのに、数年がかりの裁判闘争が必要だった。翌朝にはイチャルパ(先祖供養の儀式)が営まれた。2018年8月、平田剛士撮影

 

アイヌの問題は北海道という一地域の問題では決してない。わたしたちは、日本国家による先住民族支配の歴史を直視し、課題を共有し、我がこととすべく前に進む時ではないか。

 

(注)現在、全国12大学に約1600体以上の遺骨が保管されていますが、安倍政権、各大学は謝罪と賠償を行わずに、これら遺骨を20年4月開設予定の白老「民族共生象徴空間」のなかの慰霊施設に一括収容しようとしています。収容された遺骨はDNA研究のために破損するなど不当な研究のための施設です。まさに「慰霊・研究施設」に他なりません。(出典:「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!全国実行委員会(ピリカ全国実)発行パンフレット「アイヌ民族・琉球民族の遺骨を郷里に返還させよう!先住権・自決権を支持しよう!」)

 

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