生活保護基準の引き下げと母子加算の減額に反対します
厚生労働省は、生活保護費のうち、食費や光熱費等にあたる生活扶助費の支給を2018年10月から段階的に引き下げ、母子加算を減額するとしています。生活保護費の削減は、2013年8月から始まっており、この削減で高齢者やひとり親家庭をはじめとする生活保護世帯の生活は、一層困難になることは明白です。
特に、ひとり親家庭においては、母子家庭の約8割が就労しているにもかかわらず、非正規雇用などにより、その6割近くが貧困家庭である実態が厚生労働省の調査でも報告されているように、ひとり親家庭が直面している厳しい生活実態が社会的な課題となっています。このような状況の中で、ひとり親家庭の生活を支える命綱である母子加算を減額することは、女性の貧困だけでなく、子どもの貧困対策にかかわる様々な施策や取り組みにも逆行するものです。
また、非課税の基準が下がることで、これまでの非課税世帯が課税されることになります。さらに、生活保護基準は教材費や給食費など就学援助をはじめ、各種福祉サービスや保育料などの子育て支援サービスの基準額、高校や大学などの奨学金や最低賃金などとも連動することが多いため、生活保護世帯以外の低所得世帯にも大きく影響が及びます。そしてその結果として、貧困層のさらなる拡大や貧困の世代間連鎖となり、悪循環が生じることが懸念されます。
生活保護基準の改定は、憲法25条で保障されている「最低限度の生活水準」が変わるということです。今回の基準改定の理由が、「現行の基準額が生活保護を受けていない低所得世帯の生活水準を上回るケースがある」とのことですが、そもそも、格差が広がる中で低所得者世帯を基準にすべきではありません。生活保護の要件を満たす世帯のうち、生活保護を受けている割合は約2~3割とされています。これは先進諸国の中では非常に低い割合です。特に交通不便地域や子育て世帯では、車を手放すと暮らせないという事情などもあり、生活保護を申請できずに生活保護基準以下の厳しい生活を強いられている家庭も多くあります。
病気やけが、失業やDVなど、様々な要因によって、誰もが生活に困窮する可能性があります。生活のセーフティーネットである生活保護制度については、このような背景を根本的に改善し、実態に即した制度にする必要があります。
以上の理由から、生活者ネットワークは、格差を広げ、女性や子どもの貧困対策に逆行する生活保護基準の引き下げに反対し、母子加算の減額を中止することを求めるとともに、各自治体において必要な家庭に必要な支援が届くしくみづくりに注力していきます。