いいかげん動け!議会——選択的夫婦別姓の法制化を求め、広がる陳情・請願アクション

遡る2015年12月16日、選択的夫婦別姓をめぐる最高裁判決が下った。裁判の争点は――夫婦同氏を定めた民法750条は、結婚するには一方が氏(うじ)を変更することを余儀なくする夫婦同姓強制であり人権侵害にあたる、また、結婚改姓をしているのは大多数=96%=が女性であることから、男女平等を保障した憲法に反する女性差別にあたるのではないかーー。この訴えに対して最高裁判所は、夫婦同姓規定自体は「合憲」と判断したが、同時に夫婦同氏制とその在り方については、「国会で論じられ、判断されるべき事柄にほかならない」と付記、むしろ立法措置を講じるよう国に促した判決でもあった。しかし、判決から4年が経過した現在もなお、国会審議は十分に進んでおらず、選択的夫婦別姓を求める訴訟が相次いで提起されている。

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国が動かないなら、地域から、自分たちで動かそう!

こうした状況が続くなか、ちょうど1年前の2018年12月、中野区議会で、東京23区で初となる「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」が可決された。区民が提案した陳情の採択を受けて、区議会が決議し、国への意見書提出が実現したもので、今、こうした動きが都内各地に広がりを見せている。11月22日現在、6区14市で、同様の意見書(20件)が可決。また、継続審査中が7件、第4回定例会(12月議会)に提出されているものが4件に及んでいる(※)。

国立女性教育会館(NWEC)で、毎年開催されている男女共同参画推進フォーラム。今年は29日~31日、全国から1200人以上が参加した

2019年度男女共同参画推進フォーラムのワークショップ「地方議会から国会を動かす方法」

選択的夫婦別姓制度については、1996年に法案提出の動きがあったものの、保守系議員の強い抵抗でかなわなかった経緯がある。一体、いつになったら制度導入が実現するのか――一。向に動かない国のサボタージュに対し、だったら自分たちの力で国を動かそう!と2018年、「選択的夫婦別姓制度導入・全国陳情アクション」(井田菜穂事務局長)がスタート。地方議会から国会を動かす方法の一つ、陳情は誰でもできる意思表示であること、改姓による不利益は女性に限らない男女両方の問題であること等々を問題提起、私たち市民が地域から自治体議会を動かし、国に制度導入を要請するための活動方法や、押さえておくべきポイントなどをホームページに掲載、男女共同参画推進フォーラムや各地の市民集会などで提案している。同アクションは短時日に全国各地に波及し、現在、全国で31件の意見書が国に提出されている。

※都内での、選択的夫婦別姓制度導入や審議を求める意見書の可決状況、及び請願・陳情の状況/20191122日現在(自治体議会事務局に電話ヒアリング:東京・生活者ネットワーク広報室) 【意見書が可決された区市(2018年~):中野区、文京区、板橋区、墨田区、世田谷区、豊島区、東久留米市(再採択)、府中市、国立市、小金井市、小平市、立川市、多摩市、調布市、西東京市、東村山市、東大和市、町田市、三鷹市(再採択)、武蔵野市、(再採択)】【請願・陳情が継続審査中:足立区、江戸川区、大田区、江東区、杉並区、練馬区、武蔵村山市】【第4回定例会に請願・陳情が提出されているもの(201912月議会):台東区、練馬区(2件目)、目黒区、品川区

都議会では、請願が採択されるも、自民の反対で意見書提出ならず

東京都議会にも6月の第2回定例会に「選択的夫婦別姓の法制化を求める意見書の提出に関する請願」が提出され、賛成多数(自民党は反対)で採択。これを受けて、9月の第3回定例会文教委員会において、国に提出する意見書案が提案されたが、ここでも自民党が反対して全会一致とならず、提出には至らなかった(都議会は意見書の提出については全会一致が原則)。

いつまで女性に「同姓を強制」するのか

近年、夫婦の姓をめぐる環境は大きく変化している。平均初婚年齢は30歳前後となっており、男女とも生まれ持った氏名で信用・実績・資産を築いてから初婚を迎えるケースが多く、改姓時に必要な事務手続は確実に増え、戸籍姓でのキャリア継続を望むゆえに事実婚を選ぶ夫婦も少なくない。少子化により一人っ子同士のカップルが増えており、「改姓しなくていいなら結婚したい」という声も多数聞かれる。

地方議会も国会も、選択的夫婦別姓制度の実現に向けて、今度こそ本気で動くことが求められている

選択的夫婦別姓制度の導入は、夫婦で同じ姓を選択できる一方で、改姓を望まないカップルは夫婦別姓を選べるようにするもの。これによって、男女が改姓による不利益を案ずることなく結婚を選択できるようになる。また現在「旧姓併記」は認められているものの、法的根拠はない。結局、二つの「姓」を使い分けることでしかなく、例えば災害時の本人確認などで混乱が生じかねず、曖昧な制度のままでは男女ともに不利益が解消されることはない。
東京・生活者ネットワークは、人権保障の促進と保護を前提に置く人間開発、男女がともに自律して活動できる社会の実現のために、選択的夫婦別姓に関する民法その他の関係法令について国会審議を推進するよう、地域から国会及び政府への働きかけを強めていきます。

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