小金井市に地下水保全条例を

小金井市議会議員 小山美香
小金井・生活者ネットワーク

日本水大賞グランプリ 雨水浸透ます設置事業
 小金井市は、 北に玉川上水、 南に野川を配し、 「水」 と 「緑」 豊かな立地が特徴で、 住み続けたい理由にこれらの条件をあげる市民も多くいます。
 今でこそ野川は清流を取り戻しつつありますが、 市全域で下水道設置が完了する1982年以前は生活排水が流れ、 汚染の状況は深刻でした。 その後、 生活排水は流れなくなったものの、 雨水はすべて下水道に流れ、 また湧水の水量の減少で、 野川の水質は改善されませんでした。 そこで、 埋め立てたらどうかとか排水路として上を塞いだらどうかという話も持ち上がるほどでした。
 野川に何とか昔の清流を取り戻したいという市民の働きかけで、 下水道工事指定店と市の話し合いが始まり、 下水道に流れてしまう雨水を地下に戻そうという計画が浮上しました。 生活排水と一緒に雨水が流れていくのはおかしい、 雨水は下水処理の必要がない、 せめて屋根に降る雨だけでも地下に浸透させれば湧水も増えてくるのでは、 そんな思いから小金井市の雨水浸透ます設置事業が始まりました。
 ’89年、 市に 「雨水浸透施設の技術指導基準」 が設けられ、 建物を新築、 増改築する際には雨水浸透ますを設置(個人負担)するようにお願いし、 設置者を増やしてきました。 さらに、 ’93年からは、 既存の建物にも対象を広げ、 助成をつけることで設置を呼びかけてきました。
 雨水を涵養していくことで、 その恵みをさまざまな生物が受けていく大きな水循環の一つに地下水を位置づけたこの取り組みは、 雨水浸透ます設置率が世界一という結果をもたらすことになりました。 事業者、 市、 市民の相互の協力で行われた小金井市の事業は、 一昨年、 昨年の受賞に続き、 今年は、 日本水大賞のグランプリ受賞という形で評価されています。

地下水保全に未然防止の対策を
 野川周辺では、 古くから多くの団体が湧水の復活や水辺に親しむ活動をしています。 水道水の約6割を地下水でまかなっている小金井市では、 河川水よりもはるかに安全でおいしい地下水をずっと飲み続けたいと願う市民の強い思いが活動の背景にあります。 小金井・生活者ネットワークでも石けん運動や除草剤散布の状況調査を10年以上続けながら、 地下水の汚染防止を小金井市に働きかけてきました。 その結果、 市でも対策の一つとして、 公共施設での合成洗剤使用をやめ、 石けん使用にきり変えたことや除草剤の散布の中止などが実現しています。
 東京都には、 水道水源としての地下水を’90年までに全面的に河川水に転換しようとする計画がありました。 しかし、 地下水を飲み続けたいと願う多くの市民の都への働きかけや都議会では生活者ネットワークが働きかけたことで、 都の水政策として 「地下水を予備的水源として利用していく」 位置づけに変えることができました。 しかし、 都市化が進む中で、 緑が減り、 土が覆われ、 雨水が滲み込む場所がなくなり、 東京都の揚水量は15年くらい変わらないにもかかわらず、 この1〜2年浸透量が揚水量よりも下回るところにまできています。
 また、 都市化の波は化学物質による地下水汚染という事態も引き起こしています。 モニタリング井戸からは、 市内3か所で基準値を超える有機溶剤が検出され、 対策は充分とは言えません。 地下水の汚染を除去することはとても難しく、 汚さないという未然防止の対策を早急に充実させなければなりません。

生活者ネットワーク 地下水保全条例を提案
 このような状況の中で、 雨水の地下への涵養をさらに進めていくことや地下水をこれ以上汚染させないために、 総合的な水施策や規制が必要と考え、 小金井・生活者ネットワークの小山美香と藤村忍は、 地下水を保全する条例の制定を6月定例市議会に議員提案しました。
 現在、 建設・環境委員会に付託され審議しているところですが、 小金井市ではこれから環境基本条例の制定準備が始まるところであり、 そこに盛り込めないか、 整合性はどうなのか等の質疑がありました。 しかし、 環境基本条例には大きな水循環の一つとして地下水を位置づけることはできても、 私たちが提案した内容を詳しく盛り込むことはできません。 小金井市の特徴である地下水だからこそ、 保全していく根拠となる個別条例をつくる意味がここにあります。
 しかし、 小金井市だけが雨水浸透ますを設置し、 対策を強化しても効果が薄いことは言うまでもありません。 まず、 小金井市が地下水の保全について条例で位置づけ、 早急な対応を進めるとともに、 小金井市発で近隣市へ、 そしてもっと広域で地下水保全に取り組むことが求められます。 自治体を超えて、 粘り強く働きかけていきたいと思います。

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